【越山若水】二度と見たくない映像だ。ワンプレーを終えて力を抜いたところへ後ろからタックルされ、腰の辺りから二つ折りになる選手。それは危険きわまりない反則だった▼アメリカンフットボールの関西学院大と日本大の試合で起きた問題である。衝撃的な映像で火が付き、監督が指示した反則か、というので大火事の様相である▼大男がよろいのような防具を付けてぶつかり合う競技だけに、反則は人命に関わる。その危険を軽視し勝利至上主義に陥っていなかったか、真相を厳しく問いたい▼コラムニストの故天野祐吉さんに「見巧者(みごうしゃ)」をテーマにした文章がある。文字通り見るのが巧みな人を指し、昔は歌舞伎や文楽に目の肥えた見巧者がたくさんいたと書いている▼大向こうから「よっ、待ってました!」と盛り上げたかと思えば、下手な役者には「引っ込め、大根!」と容赦がない。彼らはそう、やじを飛ばすことで舞台の質を支えていた▼そんな玄人客はスポーツ、なかでも野球で見かける。選手の特徴にいちいち詳しく敵方の好プレーにも拍手を送る。ひいきのチームが負けても、内容次第では納得する▼「舞台というのは、役者や芸人がつくるもんじゃない、観客がつくる」。天野さんの見方にならえばアメフットにはまだ見巧者は少ないのかもしれない。「引っ込め、反則!」と競技の質を支える客を育てたい。

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