【越山若水】日本人は一種の記録魔的なところがあり、古い資料をたどると当時の天候が詳しく書き留めてある。その実例として、気象研究家、故根本順吉さんは江戸時代の書物から紹介している▼「南総里見八犬伝」で知られる滝沢馬琴は、1831(天保2)年旧暦8月の日記に、毎日の空模様を驚くほど丹念に書きつづっている▼現代風に表記すればこうなる。「昨夜中より雨。南風、今朝四時前より雨止(や)む、風止まず曇(略)夜中風烈(はげ)しく始終南風なり」。こんな記録を7年も続けたという▼同じ頃「毒熱数日、晩殷雷(いんらい)数声」と書いたのは儒学者、松崎慊堂(こうどう)。耐えがたい暑さが続き大音量の雷が発生した様子を描写した。では日本人はどうして記録魔になったのだろう▼当時は地震が頻発し異常気象で飢饉(ききん)も続発した。度重なる災害に人々は天気の変化に敏感になったというのが根本説。池内紀さんのエッセー「戦争よりも本がいい」(講談社)に教わった情報だ▼さてきのうの本県地方。美浜町で31・0度を観測するなど8地点で「真夏日」に、9地点は今年最高の暑さとなった。熱中症対策には万全を期したい▼かと思えば、週末は再び気温が下がり、大雨の恐れもあるという。今年は37年ぶりの大雪で始まり、最近も暖房が恋しい寒い夜が続いた。天候不順の気配が漂い、カエルの鳴き具合やツバメの飛び方まで気になる。

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