【論説】かつて湊(みなと)町として栄えた坂井市三国町の旧市街地を中心に、人口減による地域の課題解決を行政と民間、大学の3者が共同で進める組織「坂井市アーバンデザインセンター」が、正式に発足した。古民家を改修した事務所で、街並みや歴史を生かしたまちづくりを計画し、実行する。

 アーバンデザインセンター(UDC)は、行政が担う都市計画や、市民によるまちづくりの枠を超え、地域が連携して資金や人、施設を出し合い、都市デザインの専門家が客観的立場から参加する組織。故北沢猛東京大教授が提唱し、2006年に千葉県柏市に初めて設立された。

 坂井市は13年度から、東京大の都市デザイン研究室と連携して旧三国湊の町家を活用するプロジェクトを進めており、15年度に同研究室からUDC設立の提言を受けた。国の地方創生拠点整備交付金の対象となり、市が昨年11月から築約100年の古民家を改修して拠点となる「アーバンデザインセンター坂井」を整備した。全国17番目の設置で北陸では初となる。

 会長にはリコージャパンの片岡誠治福井支社長が就任。現在はスマートフォンなどで旧市街地の散策ができるデジタルマップ作りを県立大、リコージャパン、市との連携で進めている。

 日本ではこれまで、主に行政主導でまちづくり組織を設置、運営してきた。ところが2月の大雪にみられたように、高齢化に伴うコミュニティーの衰退、合併によって拡大した都市域などを背景に、市民生活は公助だけでは成り立たなくなっている。

 UDCは行政の外郭団体ではないし、企業や大学の組織でもない。特定の利害関係者の立場に立たず、公民学が日常的、多面的に協働しながら持続可能なまちづくりを模索する。行政なら計画から予算化、議会の議決と長い時間がかかるが「誰かが案を出し、費用さえかからなければ明日にでもできる。いい意味でのゆるいつながり」(市)が最大の利点だ。

 ただ、先行のUDCは新たな都市開発を行う地域や、周辺に大企業、大きな大学がある人口40万人規模の都市で設立されてきた。人口減少の歯止めと、まち再生を目的にした地方の小規模都市では初の試みになる。自治体の財政状況が厳しさを増す中で、有効なまちづくりの手法となるか全国からの注目度も高い。

 当面は任意団体として市から施設を借り受け組織を運営、財政基盤の強化に向け9月の法人化を目指す。将来は、市全体のまちづくりを進める拠点とすることも想定している。競争が激しくなるこれからの時代の都市には、地域資源を引き出し、より魅力的なものにしていく力が求められる。地域のデザインセンターとして、坂井市のみならず21世紀のまちづくりの在り方を占う試金石となる。

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