【越山若水】まるく美しいもの。白川静さんの「字通」を引き、そんな意味が「珠」にあるのを確かめた。真珠などの類ともある。その文字をわが子の名前に選んだ親御さんの喪失感がいま胸に迫る▼新潟市の小学2年、大桃珠生(たまき)さん(7)が殺害され、JR線路に遺棄されてちょうど1週間。逮捕されたのは、珠生さん宅から100メートルほどの近所に住む23歳の会社員だった▼その小林遼(はるか)容疑者は別に怪しげな風貌でもない。むしろ真面目そうに見える。勤務先や知人が「まさか」と驚くのを見ると、凶悪犯罪に遠い生活態度でもあったのだろう▼事件はむごいものだった。首を絞めて殺害した上に、犯行の痕を消そうとしたのか、遺体を列車にひかせた。女の子の命や尊厳というものを一顧だにしない冷酷さに身震いした▼なぜこんなことを…と、つい容疑者の心の底をのぞき込みたくなるが、おとなしそうな顔をして血で手を汚した人間ならこれまでにいくらも見てきた▼結果として何か分かったかといえば、どうだろう。真相解明は司法の今後に待つとして、いまはただ珠生さんの冥福を祈りたい▼誰かが言っていた。「人は2回死ぬ」と。1回目は命が途切れたとき。2回目は人々に忘れられたとき。そのときが本当の死だという。珠のような生を送るはずだった女の子のことを記憶に刻みたい。そして、子どもたちを守りたい。

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