昨年12月の「甲子園ボウル」で対戦した「赤」の日大と「青」の関学大

 大学を卒業してから30年、40年近くたつというのに、ラグビーやアメリカンフットボールのOBたちは、学校の枠を越えてよく飲み交わしている。

 ラグビーであれば早慶、早明、慶明、慶同などなど。ただ飲むだけではなく、それが億単位のビジネスにつながっていることに、驚いたこともある。

 アメフットも同じ。中でも日本大と関西学院大の卒業生は東西の大学アメフット界を代表する名門であり、かつて激しく競ったことから、お互い尊敬の念をもって卒業後も接している。

 彼らは体をぶつけあい、相手も自分と同じ苦労をしているに違いないと理解しているからこそ、生涯の友人となり得たのだろう。

 未経験者からすると、とても羨ましい。

 しかし、日大アメフット部の根幹が揺らいでいる。

 5月6日、関西学院大との51回目の定期戦で、日大ディフェンスの選手が関学大のクオーターバック(QB)にレイトヒットを浴びせたことが、大きな波紋を呼んでいる。

 実際、日大の当該選手はそのプレーの後にもレイトヒットの反則を取られ、さらには口論になった相手選手のヘルメットをこづき、資格没収(退場)処分となった。

 映像を見る限り、規律は失われ、やりたい放題だった。

 また、試合後に日大の内田正人監督がラフプレーを容認するような発言をしたことから、事態は悪化の一途をたどり、ついには鈴木大地スポーツ庁長官が、「危険なプレーを容認するわけにはいかない。なぜ、そのプレーに至ったか探ることが必要だ」と述べるまでになった。

 さらには、日大との春のオープン戦が予定されていた法政大、東京大、立教大の3校は、対戦を実質断るという事態となった。

 また、関学大は12日に記者会見を開き、今回の問題に関して、日大側に誠意ある対応がない場合、来年度以降の定期戦を取りやめる意向を示した。

 異常事態である。試合がしたくとも、相手がいないのだから。

 関学大との50回をこえる定期戦が中止となれば、日大はラフプレーによって、長年築いてきた尊敬と信頼を失ってしまったことになる。

 選手たちは、生涯の友を作る機会を奪われてしまいかねない。

 スポーツが結ぶ友情と尊敬は、どこから生まれるのか。それは相手への信頼である。

 激しいプレーであっても、それが決して自分を傷つけるためではないことを、選手たちは知っている。

 しかし日大と関学大の試合では、スポーツの最も重要な価値が失われてしまった。

 かつてラグビー日本代表、早稲田大学で監督を務めた大西鐡之祐氏は、名著『闘争の倫理』の中で、フェアプレーが生まれる根源を次のように説明している。

 「あるプレイ中に何らかの問題が起こるわけですね。そのときそれに見合う行動は、一つは良い行動であり、一つは悪い行動だと思うのですよ。(中略)そういうときに、そういう悪い行動をしたら勝てるかもしれないという判断と、いや、そんなことまでして勝つ必要はない、という自分の正しい判断と、それがここで葛藤する。そしてそのときにフェアの方の行動が、アンフェアの方の行動に打ち克って行われた場合に、その行動がフェアであると、こう言われるわけです。だから、そのときに愛情が湧くということは、その選択の根本的なものは愛情だということではないでしょうか。(中略)従ってフェアプレイの根本には愛情がある、ということになりますね」

 葛藤。正しい判断。そして、愛情。相手への愛情がなければ、信頼も築けない。

 日大が名誉を取り戻すには、長い時間が必要かもしれない。

生島淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市で生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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