【越山若水】中国を代表する現代作家、余華(ユイホア)さんは自選のエッセー集「中国では書けない中国の話」(河出書房新社)で、母国の海賊版サイト事情をこんなふうに紹介している▼余さんの前著「ほんとうの中国の話をしよう」は、天安門事件に言及したため発禁書となった。しかし台湾版が出た途端、ネット上で無料ダウンロードできた▼なぜそうなるのか。中国で海賊版図書を取り締まるのは文化局と公安局。ただ両者とも芸能育成や娯楽産業の指導、または増加する刑事・経済事件の捜査に忙しい▼だから海賊版チェックにはとても手が回らない。加えて書籍や映画、音楽、ブランド品など海賊版や偽造品を製造する企業は現地の大口納税者でもある。地方政府の圧力もありむやみに摘発できない▼西洋で批判の的になる「知的財産権問題」は、中国では「経済・財政問題」へとすり替わる。さらには質のよい正規版を買えない貧困層を抱える「社会問題」の側面もある▼日本でも人気漫画が無料で読める海賊版サイトが存在する。ある漫画サイトは出版社から著作権法違反の疑いで告訴され、警察が捜査を始めたという▼著作権侵害とは別に、政府は民間業者に悪質サイトの接続を遮断するよう要請した。無法状態とはいえ、法的な根拠のないネット規制は通信の秘密に抵触する懸念もある。中国と事情は異なるが、妙にきな臭い。
 

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