福井テレビの新しい実験的生番組「県民おしゃべり・じゃみじゃみ(仮)」に出演した若新雄純さん(左)とウーマン・ラッシュアワーの村本大輔さん

◆混沌から「何か」をつくる

そんなみどりんの言葉をヒントに、僕は番組企画をつくり始めました。ちょうどそのころ、大学で創造性の研究を始めていたころでした。一見秩序やゴールの見えない混沌とした状況で試行錯誤を続けると、もちろん、ただぐちゃぐちゃになって何も生まれないこともあるが、思わぬ発見や新しい価値が連鎖的に生まれ、面白いストーリ-やコンテンツがつくられることがある。僕はこれを、福井という限定エリアで生放送されるテレビ番組で実験してみたら、独特のローカルトークや世界観ができるんじゃないかと思いました。

しかし、台本なしの生放送番組、という企画を実現してもらうことは簡単ではありませんでした。僕もこれまで、東京でたくさんの生放送番組に出演させていただきましたが、その中でも、出演者たちによる縦横無尽なフリートークが人気の某生番組では、実は事前に制作スタッフと綿密な打合せをして、どんなコメントを誰がどういう順番で発言していくか、というシナリオがしっかりとつくり込まれていました。それくらい、一度に多くの人が目にするテレビ番組の中では、どこに向かうか分からないという混沌さや曖昧さは排除したいものなんでしょう。曖昧さは、僕たちを不安にさせてしまいます。

「じゃみじゃみ(仮)」では、台本がないというだけでなく、視聴者が手元のスマホやPCから匿名で自由にコメントすることができて、そのすべてのコメントをお互いに読むことも可能で、それをもとに生トークを進めていくという不確実さを企画していました。さらに、過激な発言が話題になっていた村本さんにゲストに来てもらうという、混沌さの極みを体現していたと思います。

◆混沌としているのに、優しい

それでも、最終的に福井テレビはそれを受けいれてくれて、むしろスタッフのみなさんも一緒に楽しんでくれました。やるからには、とことん自由に実験する。村本さんは、「寛容さがあれば人はお互いに優しくなれる」ということを言っていました。事実、混沌さを極めたはずの「じゃみじゃみ(仮)」のスタジオには、不思議な優しさが漂っていました。不確実で、混沌としているはずなのに、とてもリラックスできる空間。みんながお互いにゴールや答えがないことを受けいれ合いそれを許し合えた途端に不安がうすれ、自由なだけでなく、なぜかとても勇気づけられる場所が生まれていました。

村本さんの「福井県人は北朝鮮のこと以上にイオンを拒絶している」といったブラックジョークが飛び交いつつも、グルメサイトの点数では判断できない福井の飲食店の味や、ものごとへの評価のあり方、他者との比較と幸福の関係、実はトップエリートはあまり輩出できていない福井の教育の限界についてなど、いろいろな話題を脱力的に深掘りできた有意義なおしゃべりの時間だったと思います。

お陰様で、なかなか好評だったようで、もしかしたらシリーズ化してもらうことができるかもしれません。でも、もしそうなったとしても、うまい着地やゴールは目指さず、「じゃみじゃみ(仮)のお決まり」をつくってしまわないように心がけていきたいと思います。不安定で、ちゃんと決まっていないからこそ、お互いの意見や立場・価値観の違い、独特さなどを許し合うことができるのかもしれません。そしてそこから、誰も分からなかった新しい面白さや幸せなんかを、きっと時々、見つけていくことができるはずです。
(筆者:若新雄純)
 

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