富山県黒部市でYKKグループが整備した「パッシブタウン」。社員だけでなく一般にも貸し出している=4月

 工場が林立する富山県黒部市の郊外から、しばらく車を走らせると、再び工場群が目に飛び込んでくる。YKKグループが「技術の総本山」と位置付ける黒部事業所は市内4カ所に点在する。敷地面積は計171万平方メートル。東京ドーム約37個分に相当する。

 ファスナー大手「YKK」と建材大手「YKK AP」を中核とするYKKグループの創業者は富山県の生まれ。その縁で、黒部市には従来から従業員約6千人の一大生産拠点を構えていた。さらに定期の人事異動とは別に2015年4月と16年4月に延べ約230人を黒部事業所に配属し、人事部門や経理部門など本社機能の一部を東京から移転した。黒部広報グループ長の熊谷一廣さんは「生産拠点との連携強化や、災害に備えた機能の分散が狙い」と説明する。その追い風となったのが、15年3月の北陸新幹線開業という。

 東京から黒部宇奈月温泉駅(黒部市)まで片道約2時間半。「顧客と黒部事業所で商談がしやすくなった。東京本社との行き来も楽になった」と熊谷さんは語る。

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 YKKグループは本社機能の一部移転をきっかけに黒部市の振興に力を注いでいる。熊谷さんは「地域社会に根差し、貢献する考えで事業を展開している」と説明する。

 その代表例が、有名な設計者を起用して社宅を新築・改装した市中心部の集合住宅「パッシブタウン」だ。14年7月以降、太陽熱給湯などを備えた施設が117戸完成し、その一部は一般に貸し出している。25年までに約250戸に増やす計画だ。市も連携し、周辺道路を広げて良好な住環境を整えている。

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