【論説】福井県外中学校の教育旅行などに活用されている、福井県小浜市阿納の水産体験施設「ブルーパーク阿納」の受け入れ数が今年、初めて5千人台に到達しそうだ。地元の民宿経営者たちが立ち上げてから12年目。住民パワーが右肩上がりの躍進を支えてきた。市が阿納を含む内外海(うちとみ)地区の滞在型観光振興を進める中、同施設の好調ぶりは大きな弾みとなりそうだ。

 同施設は阿納漁港にある。民宿業者が2006年、自費でテントを張るなどして整備したのが始まりだ。10年には県の交付金を活用して通年型の施設に建て替えた。釣り堀や魚さばきの体験、シーカヤックなどが楽しめる。

 教育旅行の生徒たちは数軒の民宿に分かれ宿泊する。近年の修学旅行はホテルが主流のため、民宿の大部屋で寝泊まりするのは生徒にとって貴重な体験になる。施設のある海から民宿はすぐそばで、生徒の安全を確保しやすい利点もあるという。

 同施設の受け入れ数は07年に170人だったのが、年々増加し11年に1731人。15年以降は4千人台を続け、今年は5500人が見込まれている。岐阜県、京都府、東京都、広島県など各地から集まっており、リピーターも増えた。

 ここまで来るには大変な苦労があった。生徒が使う包丁選びをはじめ、体験の安全確保、大型バスのすれ違い解消など、民宿経営者たちは一から試行錯誤。営業マンとして県外へ売り込みにも出かけた。地元民の団結により活気づけてきたという。

 内外海地区では民宿離れが深刻な問題となっている。フグの養殖で有名な阿納も同様だった。活路を求めての同施設運営が成功を収めていることは、ほかの集落に勇気を与える事例となるだろう。

 市では低迷している内外海地区の民宿のてこ入れを図ろうと「内外海地区活性化計画」を始めた。それぞれ特徴のある各集落の民宿を結び「内外海を一つの宿に」するのがコンセプト。魚介類の共同加工施設を造って各民宿の負担を減らすなど、支援策を進める。

 風光明媚(めいび)な海水浴場、特色ある伝統料理など、集落ごとの潜在力は大きい。計画では点在する集落に一体感を持たせ、観光客に巡回して楽しんでもらう。中でも既にビジネスモデルを構築している阿納は、計画をけん引できるコンテンツといえる。

 計画は緒についたばかりだけに今後の市のかじ取りが期待されるが、魅力ある民宿づくりはそれぞれが動きださなければ成し遂げられない。阿納のように地元が団結し独自色を高める取り組みが、計画の成否を左右することになりそうだ。
 

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