【論説】日常の買い物はもちろん、電車やバスの運賃、子や孫に渡す小遣いやお年玉でさえもスマートフォンを通じてやりとりするのだという。少々味気ない気もするが、中国ではそれが普通になりつつある。支払いに現金を使わない「キャッシュレス化」が中国をはじめ各国で広がっている。日本ではまだ現金で支払う慣習が根強いが、徐々にキャッシュレス化が進む。中国の現状を参考に、メリットや課題について考えてみたい。

 ■1周遅れの1番手■

 中国では2012年から13年にかけて急速にスマホが普及した。17年末時点での国内のインターネット利用者は7億7200万人で、このうち98%がスマホや携帯電話からの接続という。ネット利用者のうちキャッシュレス決済の利用率は、12年には15%にも満たなかったが、17年は70%にまで増えた。

 「1周遅れの1番手」。中国でキャッシュレス化が進んだ理由を、こう表現した人がいる。つまり、電話線が十分に整備される前に携帯電話やスマートフォンが普及し、さらに現金自動預払機(ATM)やクレジットカードなどの金融インフラが整う前に、現金不要のスマホアプリを使った決済が広がった。発展途上だったからこそ新しい技術が入り込む余地が大きく、世界でも有数のキャッシュレス国になったというわけだ。

 ■世界の大きな流れ■

 経済産業省の調査によると、15年時点で韓国は89%、米国では45%がキャッシュレス決済を利用するなど現金を使わない流れは各国に広がっている。

 一方で日本はまだ20%程度。国内各地にATMが設置され、不自由なく現金が使えるのに加え、偽札が多く出回る中国と違って紙幣の信頼性も高いことが逆に、キャッシュレス化に関しては後れを取る状況につながっている。

 キャッシュレス化が進めば消費者の利便性が増すばかりか、企業の省力化や生産性向上にもつながる。現金の取り扱いが少なくなれば、銀行はATMや支店を減らしてコストを抑制できる。小売・サービス業では会計や経理に関わる人を減らすことも可能になる。

 日本政府は成長戦略で、現金以外での決済の比率を現在の20%から25年に40%、将来的に80%に引き上げたい考えだ。実現に向けて税制面での優遇措置などの施策を検討するという。

 ■自分に合った方法を■

 福井でもキャッシュレス化が進みつつある。2種類の電子マネーを搭載する地域密着型カードJURACA(ジュラカ)が16年4月に誕生し、発行枚数は18年1月末で2万5千枚を超えた。

 県や市町も事業者に対し、電子マネーの支払い端末の設置費の補助制度を導入。福井国体や北陸新幹線の県内延伸を見据え、海外や県外からの訪問客に対応するためキャッシュレス化を推進する構えだ。

 今後さらに国内や福井で普及するための鍵は何か。それは「分かりやすさ」だろう。日本のキャッシュレス決済はICカードを使った電子マネーが主流だが、Suica(スイカ)に代表される“交通系”のほか、Edy(エディ)、nanaco(ナナコ)など多くの種類が乱立する。何を使えばいいのか、何がお得なのか消費者に分かりづらく、「現金派」を動かすまでには至っていない。

 キャッシュレス決済になじめない高齢者への配慮をどうするか、という課題もある。事業者はメリットを分かりやすく発信し、使う側は利便性をきちんと理解する。その上で、自分に合った方法を見つけることが重要だ。
 

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