嶺北あわら消防署の移転経緯

 福井県あわら市温泉4丁目の老舗旅館「べにや」が全焼した火災から5月12日で1週間。実況見分が11日終了し今後、原因究明が本格化する。一方、温泉街の住民からは、6棟を全焼した2017年10月の火災に続く大きな被害に、消防署の移転による初期消火の遅れを指摘する声が相次いでいる。

 嶺北消防本部によると、べにや火災の覚知時間は5日午後0時48分。3分後に出動し、さらに6分後の同0時57分に現場に到着した。17年10月の火災でも覚知から現場到着まで9分かかった。

 現在の嶺北あわら消防署の前身となる芦原消防署は温泉街の一角の舟津3丁目に位置していたが、大型車両の配備に伴い1986年に国影に移転。13年には金津消防署と統合し、温泉街から3キロ離れた現在の花乃杜5丁目に移った。この13年の移転時当初、国影に「芦原分署」を残したが、旧坂井郡の消防署の配置バランスから分署の廃止を決め、15年に閉鎖された。建物を活用するため、舟津3丁目にあった消防第1分団を、管轄する温泉街の外にあるこの分署跡に移した。

 消防に詳しい河田惠昭関西大社会安全研究センター長は「火事は、現場到着までの1分1秒が勝負。数分のロスは“致命傷”となる」と話す。消防施設の再配置には、域内全体の防火体制が考慮されているが、温泉街は旅館が隣接し多くの宿泊客が滞在、燃料に重油を使うなど、被害が大きくなる恐れがある。温泉街に住む元消防団員の60代男性は「消防署が国影にあれば、移動時間は2分前後。元々の舟津3丁目なら1分以内だろう。せめて第1分団だけでも残っていれば」と悔やんだ。

 今回の火災では、べにや西側の一方通行路が消火活動を妨げたとの声もある。道路は15年4月に再整備されたもので、景観美化や観光客の散策のため歩道を拡張し元の車道を狭めた。

 嶺北消防本部は「一方通行化による消火活動の支障はなかった」とするが、8日のあわら市議会全員協議会では一方通行路に対して疑念の声が議員から上がった。市は、消火活動に影響がなかったか今後、検証する考えを示した。

 旅館関係者の女性は「もし宿泊客が多く滞在する夜の出火だったらと思うと、背筋が震える」と話す。温泉街で飲食店を営む男性は「1956(昭和31)年の芦原大火の教訓はどこにいったのか。消防署を温泉街に戻してほしい」と訴えた。

関連記事