【越山若水】予想以上に寒い日が続いて戸惑ったが、週末から暑さが戻ってくる。いよいよ水が恋しい時節になる。その水には、もちろんご承知とは思うが、軟水と硬水がある▼日本の水は軟水で、含まれるカルシウムやマグネシウムの量が少ない。対して欧米や中国などでは含有量が多い硬水となる。だから料理法も自然と違ってくる▼米を軟水に入れて炊くとふっくらと仕上がる。しかし硬水だと黄色くぱさぱさとなり口当たりが悪い。米の表面に付着したカルシウムが、水の吸収を妨げてしまう▼さらに言えば、世界文化遺産の和食も軟水の力なくしては実現しなかった。なぜなら和食のうまみ成分を支えるかつお節や昆布のダシ、つまりグルタミン酸やイノシン酸は硬水に溶け出さないからだ▼「水の不思議」(稲場秀明著、技報堂出版)によれば、欧米や中国はぐつぐつ煮込んだスープを使い濃厚なソースや油炒めで調理する。実はこれも硬水圏ゆえの事情らしい▼本紙生活情報面の連載「食で向き合うお寺のこころ」では“お寺ごはん”を紹介している。野菜をふんだんに使った料理が多く、ダシの役割も大きい▼長い歴史を有する精進料理は、繊細な味覚と季節感が魅力の和食に影響を与えた。洋食のアレンジ料理にも応用された。春から夏へ、食材が豊かな季節である。ダシと軟水が醸し出す日本の味わいを楽しみたい。

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