【越山若水】知られた例に「完全民営化」と「完全に民営化」の違いがある。前者は文字通りの意味だが、後者は法律上3通りある形のいずれかで民営化すればいいのだという▼と書きながら実はよく分かっていない。それが「霞が関文学」である。「に」というたった1文字を文中にしのばせるだけで自分たちの裁量幅を広げてしまう▼習熟するには10年程度かかると聞く。もともと頭のいい人たちだから、手練(てだ)れに育てば容易なことでは真意をつかませない。その手ごわさは、公式の発言も同様だ▼きのうの衆参予算委を見て改めて感じた。注目したのは加計学園問題で参考人招致された柳瀬唯夫元首相秘書官である。淡々として臆する様子もなく、いかにも場慣れしていた▼発言には、首をひねるものもあった。学園の獣医学部新設計画を早くに知りながら、安倍晋三首相に伝えなかったという。常に首相の身近にいたのに?世間の常識とは程遠い▼東洋思想の碩学、安岡正篤(やすおかまさひろ)に田中角栄元首相を巡る逸話がある。金脈問題で田中内閣の人気が急落したとき、安岡に助言を求めてきた官僚がいた▼安岡は答えた。「目白御殿を売り払い、国民にわびよ」(神渡良平著「安岡正篤 人生を拓(ひら)く」講談社)。根回しに奔走した官僚の努力は結局、むなしかった。が、当時の霞が関に民心を畏(おそ)れる気風のあったことが知れる。いまは…。

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