【論説】安倍晋三首相と中国の李克強(りこくきょう)首相、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が出席し行われた日中韓首脳会談。喫緊の課題である北朝鮮の完全な非核化に向け連携していくことなどを確認した。

 しかし、前日には中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との2度目の首脳会談があり、3カ国会談の最中にポンペオ米国務長官が訪朝。存在感をかき消すような動きが相次いだ。非核化問題は6月中に見込まれる米朝首脳会談と、水面下で続く両国の交渉次第との状況にある。手順を巡る3カ国の温度差も否めない。

 日本は北朝鮮への圧力維持や拉致問題解決など従来の主張に終始し、協力は取り付けたものの、北との対話を深化させる中韓に対し孤立感が一層深まったとの印象が拭えない。ただ、日朝対話への道筋を探り、主体的に打開を図るためにも連携は重要であり、緊密に重ねていくべきだ。

 首脳会談では、北朝鮮の「完全な非核化」を柱とする南北会談での「板門店(パンムンジョム)宣言」を評価。安倍首相は、北朝鮮の全ての大量破壊兵器と弾道ミサイル計画に関して「完全かつ検証可能で不可逆的な方法での廃棄へ取り組みを進めるべきだ」と主張。「北朝鮮が国連安全保障理事会決議を完全に履行するのが共通の立場だ」と述べ、制裁維持の方針を表明した。

 これに対して、李首相は「対話の軌道に戻ることを歓迎する」と対話重視の姿勢を強調した。習主席と金委員長の2度目の会談でも、核の完全放棄に向けた期限などを明らかにするよう求める米国に対して、北朝鮮はあくまで「段階的」な非核化で見返りを得たい考えを示し、習氏も理解を示したとされる。李首相の発言にもこうした含みがあるのだろう。

 文大統領は、圧力維持を掲げる一方、米朝首脳会談の成功に向け、北朝鮮への融和ムードを最大限に演出するのに腐心。板門店宣言には南北共同連絡事務所の設置や鉄道、道路の連結など、制裁緩和とも受け取れる内容が盛り込まれ、段階的な非核化に応じる下地はあるとみるべきだ。

 安倍首相が最重要課題と位置づける日本人拉致問題では、会談で早期解決に向けた中韓の支援と協力を求め、「日本の立場に理解を得た」とした。ただ、李首相は会見で「日朝対話を支持する」と述べたのみ。南北会談で金委員長に拉致問題を話したとする文大統領は「円満解決に最善を尽くす」と応じたが、どの程度の関与かは見通せない。

 拉致問題で安倍首相は、米朝会談の際、トランプ米大統領に提起を要請した。だが、交渉の成り行きで触れられない可能性も否定できない。

 日本は自ら日朝対話の実現を図りたいが、手詰まりとの指摘もある。ならば中韓のチャンネルを最大限駆使する手も模索すべきだ。そのためにも、日中韓で確認した自由貿易協定(FTA)交渉の推進など経済対話を通じて、連携を密にする努力が必要だ。

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