【論説】卓球の世界選手権団体戦女子で、韓国、北朝鮮の南北合同チームが銅メダルを手にした。4月の南北首脳会談以降、急速に進む融和ムードの反映とはいえるのかもしれない。ただ、エントリー段階には存在せず、大会途中にトーナメントに出現したチームにメダルが認められたことは強い違和感がある。スポーツのルールを突然変更することは、融和のアピール方法として適切とはいえない。

 大会で韓国、北朝鮮は別の1次リーグを突破。決勝トーナメント準々決勝で直接対決するはずが、直前に合同チーム結成を宣言、対戦を回避した。試合を行っていないので両者棄権扱いもあり得るケースながら、国際卓球連盟(ITTF)は合同チームの準決勝進出を認めた。準決勝で日本に敗れたものの、3位決定戦がないために銅メダルが確定した。ITTFのトーマス・ワイカート会長は会見で不公平が生じないか問われ「これはルール以上のもので、平和へのサインだ」と述べ、ルールを曲げた決定だったと事実上認めた。これに対して日本卓球協会の幹部も、歓迎するコメントをしている。

 今回の韓国、北朝鮮両チームは、ともに十分な実力を有していた。堂々と技をぶつけ合い、負けた方が勝った方の準決勝を応援していたら、世界の感動を呼び賛辞が湧いただろう。両チームはせっかくの機会を逃したのではないか。

 合同チームといえば、2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪アイスホッケー女子でも実現、関心を集めたが、政治主導のやり方に「選手が置き去り」と批判が出た。南北による4月の「板門店(パンムンジョム)宣言」は、今夏のアジア大会などへの共同出場を盛り込んでいる。スポーツでの融和を図るのなら、それにふさわしい方法を探るべきだ。

 ITTF会長を務めた故荻村伊智朗氏は自伝「笑いを忘れた日」で、「スポーツは政治から自立しているべきだ」と強調している。世界卓球は名古屋大会(71年)の米中ピンポン外交、千葉大会(91年)の南北合同チーム参加など国際友好に貢献した実績がある。これらは、スポーツに政治が持ち込まれたとみるのは妥当でない。荻村氏らが自立の信念で実現させた成果だったはずだ。そのために時間をかけて入念な準備を行った荻村氏は、公正な大会運営については厳格だったという。

 ITTFには「国単位」にこだわらない伝統があるという。合同チーム自体はスポーツの素晴らしさを表現する試みといえる。ならばなぜ、事前準備を怠り、卓球で最も権威のある大会のルールを軽視するかのような決定をしたのか。卓球界にもダメージにならないかが危惧される。

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