コウノトリのひなが映ったモニターを見ながら笑顔を見せる飼育スタッフと地元住民=5月7日午後3時35分ごろ、福井県越前市

 兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園から福井県越前市白山地区にやってきて7年目。福井県内での繁殖を期待されてきたコウノトリの「ふっくん」「さっちゃん」ペアがついに“わが子”を抱いた。県外のペアの卵を預かる「托卵(たくらん)」でなく、同地区で暮らす2羽が産んでかえした待望のひな。長い間見守り続けた地元住民は吉報に沸き、飼育スタッフは「巣立ちまで鳥が安心できる環境を維持しなければ」と気を引き締めた。

 5月7日朝、巣の中を撮影した監視カメラにひなの頭らしき灰色っぽいものが映ると、同地区にある県コウノトリ支援本部の緊張が一気に高まった。「無事に生まれて」。雨の中で抱卵する様子を飼育スタッフが祈りながらモニターを見守った。

 2羽と飼育スタッフは、福井県内でのコウノトリ繁殖に向けた成果を着実に上げてきた。13年に県内で初めて産卵、14、16年には托卵によるふ化に成功し、15年以降の放鳥に結びつけた。17年には同地区ゆかりのコウノトリ「コウちゃん(武生)」の孫を地元から自然界に放した。

 当初から飼育に携わってきた越前市職員日和佳政さん(38)、藤長裕平さん(35)は、県自然環境課の木村美貴獣医師(34)とともに、産卵から放鳥に至るまで2羽を支え、有精卵が得られるよう試行錯誤を続けてきた。藤長さんは「無事に生まれてほっとしています。このペアの有精卵からのひな誕生は感慨深いものがありますね」と笑みを浮かべた。

 藤長さんらは「元気に大きく育ってほしい」と口をそろえ、「巣立ちまで安心して生活できる環境を整えることが仕事」と気を引き締めた。

 誕生したひなを一目見ようと、地元住民たちもケージ近くのしらやまいこい館に次々と訪れ、モニターに見入った。環境活動グループ「水辺と生き物を守る農家と市民の会」顧問で、無農薬の稲作や冬場に水を張る「冬水田んぼ」などに取り組む堀江照夫さん(81)=越前市=は「頑張ってきた住民の努力に応えてくれた。いい環境になった証拠」と喜んだ。

 ケージ周辺を毎日2回巡回してきた「見守り隊」の加藤信之隊長(70)=越前市=も「地元生まれで、托卵とはひと味重みが違う」と声を弾ませた。前隊長でエコビレッジ交流センターの野村みゆきさん(58)=越前市=は「待ちに待った子ども。バンザイという気持ち」と満面の笑みを浮かべ「ひなが自立して大空に羽ばたいて、そういう一つ一つの成長が地域住民の励みや張り合いになる」と感無量の様子だった。

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