【越山若水】休日の昼下がり、越前市武生中央公園の近くを通ると、芝生の上や遊具、噴水の周りで大勢の親子連れが遊んでいる。歓声や笑顔が絶えずいかにも楽しげである▼同市生まれの絵本作家、加古里子(かこさとし)さんが監修した「だるまちゃん広場」である。目の前の壁面には絵本のキャラクターたちが仲良く行進する姿が描かれている▼自らを育ててくれた郷里への恩返しとして、90歳の卒寿記念に公園再整備の協力を快諾。子どもたちが遊びを通して学べる人気の広場は昨年夏に完成したばかりだ▼それがまさに置き土産となった。加古さんが亡くなった。享年92歳。越前市で生まれ8年を過ごした。これまでのエッセーには、日野川の土手で遊んだりアユを追いかけた記憶などがつづられている▼昭和電工の研究所に勤める傍ら、社会事業で手作りの子ども紙芝居を披露。そこから「だるまちゃんとてんぐちゃん」や「からすのパンやさん」といった代表作が誕生した▼二足のわらじだったため、懐には常に「辞表」を忍ばせていた。47歳で退職したとき全国紙が、モーレツ部長は実は絵本作家だった―と報じたと聞く▼加古さんの訃報が届いた同じころ、市内で飼育するコウノトリに待望のひなが誕生した。絵本「コウノトリのコウちゃん」に描かれた場面そのものである。加古さんからの贈り物だと考えるのは見当違いだろうか。

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