消防庁の職員とあわら署などが合同で行った火災現場の実況見分=5月7日午前10時35分ごろ、福井県あわら市温泉4丁目

 5月5日に発生した火事で3棟が全焼した福井県あわら市温泉4丁目の老舗旅館「べにや」で、天皇、皇后両陛下が宿泊された同旅館の特別室「呉竹」の調度品が災禍を免れ、併設した源泉風呂の湯もわき出ることが7日分かった。呉竹は俳優の故石原裕次郎さんも長期滞在し、石原さんの写真など“お宝”の一部も残った。1956年の芦原温泉大火からの再建の際につくられた看板も無事で、奥村隆司社長は「うちの“象徴”が少しでも残ったことは奇跡的。これを励みに必ず旅館を再建したい」と話している。

 ⇒【動画】激しく燃える「べにや」

 呉竹は東館の最も奥に位置する同旅館の象徴的存在。部屋から望む庭園の美しさや落ち着いた雰囲気が多くの作家や芸能人を魅了してきた。68年の福井国体と80年の全国育樹祭の際は、当時皇太子だった天皇陛下が皇后美智子さまとともに宿泊された。石原さんも静養のため、長期滞在した。

 呉竹は本間と二つの控えの間があり、本間の東側に6畳の寝室があった。奥村社長によると、天井は焼け焦げたが、寝室の半分程度は原形をとどめており、調度品のうち、両陛下が宿泊の際に使用された三面鏡や姿見、テーブル、座椅子などが残ったという。

 呉竹併設の源泉風呂は、6日昼ごろ従業員がバルブをひねると湯が出た。確認した際には、従業員らから歓声が上がったという。

⇒2015年に国登録有形文化財に指定

 石原さん関連では、蔵に保管していたアルバムなど数点が被害を免れた。同じく蔵にあった屏風や掛け軸など一部の美術品も残った。

 看板は56年の芦原温泉大火からの再建の際、高級工芸品に使われる神代杉で作られた。日本画界の重鎮、故川端龍子が「べにや」の文字を手掛けた。56年の大火の後、復興を願い移植した同館のシンボルで樹齢250年の玄関のシイの大木も無事だった。

 奥村社長は「べにやの象徴と言えるものが残り、何より源泉が残ったのは運命的。芦原温泉大火では、翌年に全館を再建することができた。関係者の方々に理解をいただくのが最優先だが、育てていただいたお客さまや地元の方、苦難を乗り越え発展させた先人の思いを胸に、何としても再興したい」と決意を語った。

 
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