煙が上がる火事現場を見守る宿泊客や観光客ら=5月5日午後、福井県あわら市温泉4丁目

 ゴールデンウイーク(GW)真っただ中、宿泊客らでにぎわう温泉街を突然の炎が襲った。懸命の消火活動にもかかわらず、強い西風にあおられ火勢は強くなるばかり。住民や宿泊客は、火の手に消えゆく老舗旅館「べにや」の姿をぼうぜんと見つめるだけだった。

 べにやによると、火は、玄関と事務所の上に位置する2階大広間から出た可能性があるという。従業員が大広間で初期消火を行ったが、真っ黒な煙に包まれて避難せざるを得なかった。

 「突然テレビが切れて、フロントに連絡したら『すぐに逃げて』と言われた。着の身着のまま逃げるしかなかった」。4日から2泊する予定だった京都の夫婦は恐怖の瞬間を振り返り、客室点検中の50代の女性従業員は「火事と聞いて慌てて避難した。火の勢いはとても強かった」とショックを隠しきれない様子。べにや向かいの旅館で玄関を清掃していた70代の女性従業員は「風が強く吹き、みるみるうちに炎が大きくなっていった」とおびえながら語った。

 24部屋あるべにやは、GW中ということもあり4、5日とも満室。東京から家族4人で訪れ、4日から宿泊していた40代男性は「勝山に観光に出かけて戻って来たらこの状態。荷物もなくなり、どうすれば…」と途方に暮れていた。

 現場では、周辺に張られた規制線ぎりぎりまで人が押し寄せた。発生から2時間ほど経過した午後3時ごろにも「ドン」という爆発音とともに火柱が上がり、「ミシミシ」と大きな音を立てて建物が崩れ落ちた。

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 5月5日午後0時50分ごろ、福井県あわら市温泉4丁目の老舗旅館「べにや」から黒い煙が上がっていると警備会社から119番通報があった。いずれも木造2階建てで、国登録有形文化財(建造物)の本館、中央館、東館の計約3100平方メートルを全焼し、約4時間後に消えた。

 
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