【論説】トランプ米大統領が、イラン核合意見直しを要求した期限の5月12日が迫っている。イランが見直しに応じる可能性は低く、米国の核合意離脱も現実味を帯びる。離脱を受け、米国が経済制裁を再発動すれば、イランは一気に不安定化する恐れもある。合意当時、対話で核拡散を止める成果を導いたともいわれた枠組みが危機に瀕(ひん)している。

 イランは2002年、核開発を進めていることが明らかになった。イランは民生用と主張したが、核兵器保有を懸念する国際社会が協議に乗り出した。15年7月にイランと米、英、仏、独、ロシア、中国が最終合意した。▽イランの核開発を制限、国際原子力機関(IAEA)が査察▽米欧側は経済制裁を解除―などが柱である。

 ただ、核開発制限は期限付き(10〜15年)で「イランの核兵器保有の道が全て閉ざされた」とオバマ前米大統領が当時誇ったような状態とは言い切れなかった。トランプ氏が盛んに言うようにミサイル開発は合意に含まれず、共和党は当初から合意に反発していた。

 米国内法は、核合意の履行状況を大統領が定期的に判定すると規定している。トランプ氏が「最後の機会」との表現で合意破棄を警告、見直しを迫ったのが今年1月だった。その次回期限が5月12日である。

 この問題では米政権内でも対立が続いてきた。昨年7月の判定では、合意破棄を主張するトランプ氏を当時のティラーソン国務長官らが押しとどめたという。同10月にはトランプ氏が「合意の実効性を認めない」と表明。しかし側近らは、表明を行うことで大統領のメンツを立てつつ、制裁再発動の判断は米議会に委ねる方法を考え出した。米議会は同12月、核合意を当面維持する判断を下したのだが、トランプ氏の「最後通告」はそれから約1カ月後に行われた。

 ティラーソン氏は3月解任。トランプ氏は理由に核合意での意見不一致を挙げた。後任のポンペオ国務長官は初外遊で中東を歴訪、イランに厳しい態度で臨むと早速強調。トランプ氏にとって、離脱の環境は整ってきている。訪米し、トランプ氏と核合意維持に向けて協議したマクロン仏大統領やメルケル独首相も、進展は得られなかった。

 しかし、合意破棄となれば、イランは核開発に動き出す可能性がある。経済再建がうまくいっていない中で反政府活動が活発化しており、経済制裁が加われば中東全体の混乱要因となる懸念がある。米国が核開発阻止を担保するには合意にとどまるしかないはずで、駆け引きを仕掛けているつもりなら危うい綱渡りとしか見えない。合意見直しを主張するのであれば、対話以外に解決は図れない。

 中東の混乱は日本への影響も大きい。また、米国としても、自国が中心になってまとめた多国間の合意から勝手に離脱すれば、国際的信頼は失墜する。米朝会談を控えた今、米国の影響力低下は日本も避けたい事態である。
 

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