【越山若水】もう50年ほど前のこと。「ながら族」という言葉が流行した。ラジオや音楽を聴きながら勉強する受験生や、テレビを見ながら食事をする子供たちをそう呼んだ▼物事を並行して取り組んだら、集中できずどっちつかずになる。薪(たきぎ)運びと読書の「ながら族」二宮金次郎の像は、交通事故を誘発するとの理由で撤去された▼国語学者中村明さんの「笑いの日本語辞典」(筑摩書房)にこんな冗談が乗っている。課長が部下に文句を言った。「仕事しながら口笛なんか吹いちゃいかんよ」▼するとすかさず言い訳をした。「口笛を吹いているだけです」。課長が叱責(しっせき)したのは、口笛を吹きながらの仕事では能率が落ちるからだ。ところが部下は仕事なんかやってない―ととんでもない返事▼さらにこんな漫才も。一方が胸を張る。「僕は一切、二つのことを同時にはしないよ」。そこで相方は「嘘(うそ)つけ。この間、寝ながらいびきかいてたぞ」とツッコミを入れる▼ジョークで笑えるうちはいい。でも取り返しが付かない「ながら」がある。スマートフォン片手の「ながら運転」だ。悲惨な事故が何度も起きている▼昨年末には川崎市で自転車に乗った女子大生が、先月は愛知県で乗用車を運転した40代女性が、ながらスマホでお年寄りをはね死亡させた。連休後半のスタート。楽しいはずの休日が“泣日”に暗転しないように。

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