【論説】日銀は27日の金融政策決定会合で、「2019年度ごろ」としていた物価上昇率2%目標の達成時期見通しを削除した。大規模金融緩和は当面継続されるが、2%はその目標としてきたもの。黒田東彦総裁の2期目スタートと同時に、日銀緩和は「転機の始まり」を迎えた可能性がある。

 決定は一見、分かりにくい。緩和の政策だけは残したのにその目標をあきらめたと受け取られかねない。黒田氏は削除について、2%が達成できなければ、直ちに追加緩和に踏み切ると誤解されるのを避けるためと説明した。今後の政策決定において2%という数字に縛られるのを避けたい、との思惑ではないか。また、緩和縮小に踏み切る「出口戦略」のタイミングを計る上では、ハードルが下がったとみることもできる。

 日本経済が好調を維持する中、市場は出口戦略への関心を高めている。今年1月9日、日銀が国債購入額を減額。すると緩和縮小の兆しとの臆測が広まり、国債が売られ円が買われた。3月には、衆院聴取で黒田氏が「19年度ごろ議論しているのは間違いない」と、出口戦略の時期に言及。やはり長期金利が上昇、円が急伸する反応が起こった。黒田氏2期目の最大課題は出口戦略とどう向き合うかなのは間違いない。

 大規模緩和は13年4月に始まった。大量の国債購入で市場にお金を供給、16年1月にはマイナス金利導入も決定した。緩和により円安株高がもたらされ、物価上昇率も2%に届いていないとはいえ、足元はプラス基調。政府のデフレ脱却宣言はまだだが、既に脱却したとみる専門家も多い。

 ではいつまで緩和を続けるのか。「大胆」「異次元」と呼ばれる政策はリスクも大きい。日銀緩和は事実上の「財政ファイナンス」との指摘もある。市中の国債を日銀が大量に買い上げるのは、政府が直接引き受けさせているのと同じとの疑念だ。歯止めない財政支出につながるため、財政法が禁じている手法である。

 大量購入にはいつか限度が来る。4月に福井市で講演した富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー早川英男氏は著書「金融政策の『誤解』」で、大規模緩和は本来、短期決戦で行うべきで、現状のような長期戦をすべきでなかったと強調している。

 早川氏は講演で、2%は中長期目標にして国債購入ペースを落とし、政府は財政健全化を進めるべきだと訴えた。出口戦略は、金利上昇に伴う金融システム不安定化に注意が必要になり、慎重なかじ取りが求められる。日銀も政府も備えるべきだ、との指摘だ。今回の削除で、2%は事実上中長期目標になったとの見方は出てくるだろう。黒田氏がどの時期を選んで、出口戦略の踏み込んだ見解を示すのか注目される。

 4月は、日銀の独立性を高めた新日銀法施行から20年の節目だった。黒田氏には、透明性の高い政策判断と、サプライズよりも分かりやすく丁寧な国民、市場への説明を求めたい。

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