【越山若水】韓国映画「JSA」を見たのは2001年のことだ。朝鮮半島の軍事境界線・38度線にある「共同警戒区域」が舞台で、南北の兵士たちの交流を描いた作品である▼互いに挨拶(あいさつ)を交わし、たばこを交換する。チョコパイを手渡すシーンも登場する。敵対する若き兵士の友情に心を動かされたが、現実離れしているとも思った▼実際、板門店ではその後何度も南北会談が開かれたものの、平和の道のりは遠かった。昨年11月には亡命を試みた北の兵士が銃撃され、軍事衝突の緊張に包まれた▼分断を象徴するその現場で、北朝鮮のトップ金正恩(キムジョンウン)委員長が境界線を越え、初めて韓国に足を踏み入れた。文在寅(ムンジェイン)大統領の出迎えを受けると和やかに握手を交わし、歴史的な南北首脳会談に臨んだ▼国連の制止も聞かず核実験やミサイル発射を強行し「ならず者国家」と呼ばれた北朝鮮。ところが年が明けると急転直下、平昌五輪に参加するなど融和路線にかじを切った▼映画「JSA」の公開から17年。南北の首脳がその舞台に友好の足跡をしるした。金委員長は芳名録に「平和な時代、歴史の出発点にて」と署名した▼共同宣言では「完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現する」と高らかに表明した。とはいえ世界はまだ半信半疑。6月には米朝首脳会談が控える。今回の会談が平和に向かう「出発の一歩」と願いたい。

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