工夫を凝らしながら障害のある子どものヘアカットを無料で行っている高瀬陽子さん=福井市御幸3丁目

 「病気や障害のある子どもにも、美容室は楽しい話をして、きれいになれる場所だと感じてほしい」―。福井市御幸3丁目の美容室「MOK(モク)」の美容師、高瀬陽子さん(39)が、療育手帳や障害者手帳を持つ子どもたちのヘアカットを無料で行っている。カットを楽しんでもらおうとおもちゃの車に座らせたり、カットまでの流れを分かりやすく伝える専用のスケジュール表を作ったり、それぞれの子どもに合わせて工夫を凝らしている。

 「突発的に出てきたアイデアだった」という無料カットは、高瀬さん自身の経験に基づいている。長男(10)がダウン症で、小さいころはカットをしようとハサミを向けると怖がった。じっとしていられない息子を押さえつけながらカットしたこともあった。同じように苦労している人を手助けしたいと、今年1月から無料カットを始めた。

 2カ月で約10人のカットを手掛けた。ある子どもは、鏡に映る姿を見て「(髪形が)変わったね。短くなったね」とうれしそうに話した。髪が肩まで伸びた男児も来店した。カットした子どもの母親らから「普通の美容室では切れなかった。こんな場所が欲しかった」などと喜ばれ、励みになっている。

 タオルやクロスを嫌がり、動き回っても、椅子に座るのを強制しない。子どもの後ろをついて回り、髪の毛まみれになりながらカットするときもある。「椅子に座ります」「タオルを掛けます」などと流れを書いたスケジュール表に沿って、5回目の来店でようやく「髪を切ります」の項目にたどり着いた子どももいた。

 高瀬さんは「時間はかかるが、自分のペースで一つずつこなしていくのが大事」と強調し、障害のある子どもを持つ母親らの相談役にもなっている。長男のダウン症を伝えると、来店した親の理解がより深まるという。「カットを通して、わが子が増えていくような感じ。今後も続けたい」と意気込んでいる。

 無料カットは、卒業シーズンの3月など繁忙月を除く第1、3日曜日の午前中に行っている。

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