【論説】任期満了に伴う坂井市長選は、現職の坂本憲男氏が12年ぶりの選挙戦を制し、4選を果たした。3期連続無投票は回避されたが、坂本氏の圧勝が予想された中で、選挙戦を通じ活発な論戦が展開されたとはいえない。市の将来像を示す4年に1度の機会を十分に生かせたかは疑問だ。5年後には北陸新幹線県内開業も控える。数十年先を見据えた着実な成果を期待したい。

 坂本氏は2006年の合併市誕生に伴う選挙で、初代市長に就いた。旧4町の融合という難しいかじ取りを卓越したバランス感覚で推し進めてきた実績が高く評価され、前々回、前回と無投票当選を果たした。

 今回も3月中旬までは、無投票との見方が支配的だった。そこに、市の水道事業に携わった経歴を持つ金沢市の会社員が市政改革を訴え、突然出馬した。組織や地盤を一切持たない候補を相手に、坂本氏は連日、市内一円に選挙カーを走らせたものの、有権者に直接政策を訴える演説会などは開かず、盛り上がりに欠けた選挙戦となった。

 市政の大きな課題に23年春の北陸新幹線県内延伸に向けた観光政策がある。金沢開業から3年。15、16年と増え続けた坂井市内の入り込み客数は17年は減少に転じる見込み。県内最大の景勝地「東尋坊」の商店街にも空き店舗が目立つ。

 坂井市は、民主導でまちづくりを進めるユニークな土地柄。三國會所は、民謡「三国節」に合わせて踊るイベント「三國湊 帯のまち流し」や、空き家をゲストハウスに改修して活用するなど町並み保存と自主財源化への取り組みで成果を上げている。竹田地区は全世帯で構成する「竹田文化共栄会」が、まちづくりを進める。丸岡城でも住民団体が一般社団法人を立ち上げ、城下の未来像を描く。

 一方、市全体の一体感の醸成という点では課題も見える。それぞれ優れた地域資源を有しているだけに、連携が深まればさらに盛り上がりが期待できる。新幹線効果が一過性で終わらないよう、開業までの今後5年が勝負となる。

 農業、漁業も先行きは明るくない。1996年に16億円あった三国港の年間漁獲高は、09年以降は9億円前後で推移。「いちほまれ」で盛り上がる農業は、一方でコシヒカリの価格の下落も心配される。

 初当選以来、坂本氏が力を入れてきた行財政改革は一定の成果が上がっている。だが、返済額の7割を国が負担する合併特例債の発行期限は20年度。合併前の旧4町の交付税額を保証する特例措置「合併算定替」の段階的な減少も16年度から始まり、歳入の柱の一つの交付税は今後さらに先細る見込みだ。将来世代に負担を回さない、一層の改革が求められる。4期目のキャッチフレーズに掲げた市民の「笑顔」の実現に向け、強いリーダーシップを発揮してほしい。

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