【越山若水】「うまのあしがた」「妹(いも)がり行く猫」「鷹化して鳩となる」「蛇の大八」「夜糞峰榛(よぐそみねばり)の花」…。これらすべてが、春の季語と知って驚いた▼俳人夏井いつきさんが著書「絶滅危急季語辞典」で紹介している一部。魚のゴンズイの出す音が元という「ぎぎ・ぐぐ」なんてのもある。日本語は豊かで自由だなと改めて感じ入る▼夏井さんはテレビ番組の俳句コーナーが人気だ。芸能人の句に超辛口で駄目を出す。でも生徒が使おうとした言葉を生かし、見違える秀句に直すさまは魔法のよう▼指導ポイントは明快で、「映像が思い浮かぶように」との1点。添削後の句からは本当に、17文字に情景が見える気がしてくる。そして新聞の見出し作りにも通じるものがあるな、と勝手ながら思う▼俳句が映像を言葉で表現するとすれば、見出しは見た瞬間に、出来事が伝わっているのが理想。そんな違いはあるが、限られた文字数の言葉を選択する作業はよく似ている▼見出しを付ける部署にいた時は大いに苦労した。俳句に親しんでいたら、どうだったろう。見出しの賞味期限は通常長くないが、少しは話題にしてもらえるものを作れたか▼夏井さんが、日本一短い手紙一筆啓上賞の選考委員に就いた。最も短いとされる定型詩を知り尽くし、手紙表現の著書もある人。どんな豊かな言葉を見つけてくれるか、今からわくわくする。

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