【越山若水】16世紀後半のフィリピン。領主国スペインはマニラを貿易拠点にアジアでの勢力拡大を図っていた。主たる相手国は中国明王朝で、南米産の豊富な銀が元手だった▼当時スペイン銀貨は世界通貨として認知され、中国の絹製品や陶磁器など欧州で売れそうな商品と交換。経済的な利益を得たが、政治的には不満を抱えていた▼というのも、スペイン国内になるだけ銀を蓄え、オランダやポルトガルとの戦費に充てたかった。中国との交易を有利に運び、銀の流出を防ぐ必要に迫られていた▼スペインは貿易船の数を限定し、売買商品も総量規制。超えた分は中国に送り返した。しかし中国は荷物を別の小船に積み替え平然と入港した。業を煮やしたスペインは中国人を国外退去処分にした▼つまり自国第一で、輸入制限を意図する強硬策である。ただ明王朝も以前は国力維持のため民間の海外交易を禁じていたという(「1493 入門世界史」あすなろ書房)▼スペインが米国に姿を変えた米中貿易戦争が勃発しそうだ。端緒はトランプ大統領の保護貿易政策。鉄鋼輸入などに25%の高関税をかける決定である▼特に中国に対しては、知的財産権の侵害によって40年も赤字続きだと批判し追加制裁を示唆。中国側も譲らず報復措置を用意した。何しろ2大経済大国の衝突。世界の自由貿易に暗雲が垂れ込めそうで悩ましい。

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