【越山若水】日本の治安の良さは折り紙付き。そこで米国など世界各国が取り入れたのが交番制度だった。成果は上々で、ブラジル・サンパウロ州の殺人事件は激減したという▼その本家の交番で、衝撃的な射殺事件が起きた。お隣の滋賀県彦根市でのことである。容疑者は警察官になったばかりの19歳。被害者は教育係だった巡査部長▼貸与されていた拳銃が凶器に使われた。事件の要素の何もかもがあってはならないことだ。一体なぜ、こんな重大事件が起こったのか。誰もが抱く疑問に違いない▼滋賀県警は捜査を理由に動機を明かしていない。報道では容疑者の男性巡査は「怒鳴られたから」と話しているという。だが、未成年とはいえまさか警察官が…と信じられない▼元高校球児で、指導の先生から大学進学を勧められても警察官になることを選んだらしい。市民に身近な交番で働きたいと望み、実現して喜んでいたともいうから、なおさらだ▼この容疑者と同じように「お巡りさん」になりたいと言った元気な中学生を覚えている。テレビドラマで主役になることも多い「刑事」に、ではなかったので印象深い▼そのときから20年ほどもたっている。志望をかなえたのかどうかも知らないまま、いまもまっすぐな少年が当方の心にすんでいる。あの巡査も彼のようだったのではないか。そう思うほど、動機を知りたくなる。

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