栄介さん(仮名)は会社から戻ると、この車の中でシートを倒して2、3時間過ごした。親からの電話にも出なかった

 仕事を辞めて数年後、ハローワークの紹介で二つの会社に就職したが、どちらも1カ月と続かなかった。仕事をせかされたり、ミスが続いたことが原因だった。無口なのをいいことに、無関係の責任を押しつけられることもあった。「そんな会社が本当に嫌だった」。理不尽だと思ったが、反論はできなかった。

 家族らに勧められ病院に行くと「広汎性発達障害」と診断された。

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 2年前に精神障害者として、製造業の会社に採用された。主な仕事はねじの取り付け作業。職場で仕事以外の話はしないが「黙々とやれるところがいい。だから続けられている」と話す。

 県内の民間企業で働く障害者数(昨年6月時点)は2632・5人、従業員全体に占める障害者の割合は2・4%で、ともに過去最高を更新。民間企業の法定雇用率は今年4月、2・0%から2・2%に引き上げられるなど、障害者雇用は着実に進んでいる。ある企業担当者は「雇用率を達成するために、働いてくれる障害者を探しているがネットワークがない」と話す。

 KHJ全国ひきこもり家族会連合会県支部の近藤茂樹会長(70)は「精神科に通うことは、偏見もあって本人、家族にとってなかなか踏み出せない。ただ、きちんと診断してもらえば、道が開ける可能性がある」と指摘。栄介さんも「障害者手帳がなかったら仕事には就けてなかったと思う」と話す。

 そうはいっても、仕事や環境に慣れるには時間がかかる。気分転換になっていた農作業は、就職した2年前から途絶えたままになっている。

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