栄介さん(仮名)は会社から戻ると、この車の中でシートを倒して2、3時間過ごした。親からの電話にも出なかった

 入社して数カ月すると、母が作った弁当に手を付けず持って帰るようになった。「おなかがすかなくなってしまって」。福井市の栄介さん(30)=仮名=は以前に勤務していた会社員時代を言葉少なに振り返る。

 ミスをすると、上司の男性に怒られた。「早く辞めてくれ」。4、5人の社員がいる前でたたかれたり、蹴られたり。「ガソリンをかけて殺してやる」とまで言われた。

 ボールペンの先で突かれることもあった。手のひらや甲で受け止め、血がにじんだことは1度や2度ではない。周りは見て見ぬ振りだった。

 仕事が終わると、1人になりたくなった。自宅から少し離れた駐車場に車をとめ、シートを倒して2~3時間横になった。1日のことを思い出していた。親からの電話にも出なかった。そんな状態は長く続かず、半年で仕事を辞めた。

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 その後、ハローワークに時々通ったが、パソコンで求人情報を見るだけで、面接を受ける気にはなれなかった。それ以外はほぼ自宅。図書館で借りた東野圭吾の小説を読んだり、ゲームをしたりして過ごした。

 ひきこもりにありがちな昼夜逆転はなかった。朝は7時ごろに起きて、植木鉢のナスやトマトに水をやった。離れた場所にある畑に行くこともあった。ジャガイモ、ニンジン、ピーマン、ニンニク、シシトウなど季節ごとに野菜を作った。「家にいるのは(家族に)悪い。体を動かすと少し気分が良くなった」。栽培方法はインターネットや本で調べた。

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