彼女は不注意と衝動性を抱えている(筆者撮影)
独自のルールを持っていたりコミュニケーションに問題があったりするASD(自閉スペクトラム症/アスペルガー症候群)、落ち着きがなかったり不注意の多いADHD(注意欠如・多動性障害)、知的な遅れがないのに読み書きや計算が困難なLD(学習障害)、これらを発達障害と呼ぶ。
今までは単なる「ちょっと変わった人」と思われてきた発達障害だが、生まれつきの脳の特性であることが少しずつ認知され始めた。子どもの頃に親が気づいて病院を受診させるケースもあるが、最近では大人になって発達障害であることに気づく人も多い。
発達障害について10年程前に知り、自身も長い間生きづらさに苦しめられていたため、もしかすると自分も発達障害なのではないかと考える筆者が、そんな発達障害当事者を追うルポ。発達障害当事者とそうではない定型発達(健常者)の人、両方の生きづらさの緩和を探る。
今回は、関東在住で、不注意と衝動性が優勢のADHDを抱える植野亜純さん(仮名・27歳)。植野さんは社会に出てから発達障害が判明した。何度も転職を重ねた末、現在は発達障害児放課後等デイサービス(発達障害を抱える子どもの支援施設)でフルパート勤務をしている。

子どもの頃はほぼ毎日夜尿をしていた

植野さんは幼い頃、夜尿症に悩まされた。夜尿症とはいわゆる子どものおねしょのことだ。中枢神経の発達が未熟、夜間の水分制限や排泄習慣を守りにくい、下着が濡れている感覚が鈍いといった理由で、夜尿症とADHDが関係しているのではないかと、最近の研究で指摘されているのだと植野さん。さまざまな当事者の話を聞いてきたが、夜尿症のパターンは初めて聞いた。

「365日ほぼ毎日夜尿でした。幼稚園の頃、お泊まり保育のときは、先生に夜中2回ほど起こしてもらっていました。小学5年生の頃に臨海学校があった際は、さすがにどうにかしなければと、泌尿器科の名医のもとで治療しました。どんな治療だったのかは覚えていないのですが、そこから少しずつ夜尿はおさまりました。

でも、中高時代も年に1度ほど、ストレスを感じたときに夜尿をしてしまっていました。トラウマのようにしてずっと引きずっていたのだと思います。だから、家の布団には防水シートを敷いていて、それがあるだけで安心しています。友達とどこかに泊まりに行くときは平気なのですが、家でだけ夜尿してしまうんです」(植野さん)

夜尿症のほかに、ADHDらしき症状は小さいうちはあまり目立たなかった。しかし、中学の頃、いじめに遭う。当時、学年で嫌われていた女子と一緒に過ごしていたら、ほかの生徒からの無視が始まったのだ。また、当時流行していた学校裏サイト(その学校の生徒をネタにした内容が書き込まれるネット上の掲示板)にも、「キモい」「死ね」といった中傷を書き込まれた。

 

「今もですが、私はあまり性格が女の子っぽくないというか、仲の良い友達もどこか男っぽいところがある子たちなんです。当時も、男子のほうが話しやすいから男子とよくしゃべっていたら、『植野は男子と女子とではかかわり方が違う、男子に媚びているよね』みたいなことを直接言われてしまって。

矛盾しているのですが、女子特有の集団行動に対するあこがれはあったんです。だから、高校は県内で1~2位を争う進学校の女子校へ行きました。でも、やはりにぎやかな女子のグループには混ざれず、静かなタイプの子たちと一緒にいて、素の自分を出せないまま3年間過ごしました」(植野さん)

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