施設利用者の送迎などをしている大塚真哉さん。「多くの人が応援してくれるのでありがたい」と話す=3月、福井県福井市内

 「今、どんな気持ち?」と、玄関先に立っていた女性は聞いてきた。「死にたいと思っている」と答えた。相手は否定も肯定もせず、ただうなずいた。「この人は何か違う」。福井県福井市の大塚真哉さん(40)は15年ほど前の出来事を振り返る。

 大塚さんは中学2年生の3学期から不登校になった。高校には3カ所通ったが、どこも途中で挫折した。3校目の道守高校は23歳の入学。それでもだめだった。「もうお手上げだ」と思った。

 自己嫌悪と自己否定に支配されていた。「生きてる価値がない」「死んだ方がまし」といった独り言は10年ほど続いた。「みんなが自分をばかにしている」と思い込み、外に出るのが怖かった。

 道守高を挫折したころ、母親の知り合いが、自分に会うため何度も家に来た。ずっと居留守を使っていたが、10回目には、玄関先で会ってみた。その後、2年ほどかけて50回自宅で話を聞いてくれた。「最後は話すことがなくなってしまった。逆に相談されることもあった」と話す。

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 亡くなる前の身内を邪険に扱ったこと。飼い犬が死んだのは自分のせいだと思っていること。早くに父を亡くし、「母に迷惑を掛けたくない」と思い続けてきたこと…。

 全てを打ち明けると気持ちが軽くなり、「家にいても暇やな」と思うようになった。知り合いの紹介で、ゴルフ場の球拾いや農作業のアルバイトができるようになった。道端に咲く小さな草花や、宙を舞うチョウチョを眺めるだけで涙が出てきた。

 敦賀短大元教授で、家族臨床心理学の龍谿乘峰さん(68)は「ひきこもりの支援は、いろんな人が関わるより、継続して関わることが大事。本人に会うまでに数年かかることもある」と話す。また、大塚さんは時間をかけて自分の話を聞いてもらうことで「自己嫌悪の塊だった心を、徐々に休めることができた」と振り返る。

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