【越山若水】自分の姿がもし誰にも見えなかったら…。そんな想像をした人は多いだろう。つまり透明人間になる。そうなれば秘密のことも、人知れず堂々と成し遂げられる▼その類いの昔話はわが国に90種類以上あるらしく、その一つが「天狗(てんぐ)の隠れ蓑(みの)」である。彦八どんはただの竹筒を千里眼だと偽り、天狗の隠れ蓑を手に入れた▼姿が見えなくなった男は、地頭の家から米を盗んだり、酒蔵に侵入してたらふく酒を飲んだり、仕事もせずに自堕落な毎日。あきれた女房は蓑を燃やしてしまった▼諦めきれない彦八は、残った灰を裸の体に塗って再び酒蔵へ。思う存分酒を飲んだが、口の周りの灰が剥げて…。日本の「隠れ蓑」をはじめ、世界には悪さを働く透明人間の民話が多く伝わるという▼国会が過熱している。焦点は森友学園の文書改ざん、加計学園の「首相案件」文書、自衛隊の日報隠しの解明である。だが安倍晋三首相を含め、政府の答弁は要領を得ない▼財務省の改ざんに指示や圧力はなかったか、首相案件の発言は本当にあったのか―。国民の疑念は全く晴れない。まるで隠れ蓑に包まれているようだ▼永田町や霞が関にはどうやら都合のいい透明人間がいて、面倒な物事をこっそり処理しているのだろうか。ただし先の民話にある通り、透明人間は最後に馬脚を現し、悪さは失敗に終わっていることをお忘れなく。
 

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