◆桜と雪の下の野菜たち

 好天気続きの中で迎えた今年の桜の開花は例年に比べて早いといわれました。しかし、ものの見事に咲き誇っていた近くの狐橋の堤防のその桜も、降り続いた雨で今はすっかり散ってしまいました。

 雪が降り続いて雪の下になっているみずみずしくて甘いであろう大根を食べたくなり、雪の小康状態を見計らってスコップをもって畑に出かけました。一面雪のなか、掘れども掘れども土に届かず、あきらめて帰ってきてしまったのです。あの長い間の深い雪の下だった白菜、大根、かぶなどの野菜たち。雪の下だったために収穫できなかった分、雪解けとともに一挙に姿を現したので皆さんその処理に大わらわだったようです。

 中には食べきれずにそのまま畑に放置してある人もいますが、土や野菜に真正面に向き合って暮らしている人たちは、長年の経験からか、そうした野菜たちのことが、手に取るようにわかっているようです。大根は4月上旬に入った今でも抜かずに畑に生えたままで、大事に一本一本を抜いてその命をまるで慈しむように使われているのでした。もう今ではすが入ったりしておいしくないのではと思うのですが、参考に一本いただいて食べてみるとまだ柔らかくおいしいのには驚きました。

 味が落ちないうちにと雪解けとともに急いで抜いた私の畑の大根や蕪も我が家だけではとても食べきれないので、ご縁のあったたくさんの方にもらっていただきました。誰もが今年は野菜がとても貴重で高いと言ってとても喜んでもらっていただけました。なかにはとても甘くておいしかったとわざわざ電話をしてきてくださった方など、たくさんの方々とその味を共有していただけました。

 畑に行くたびにこれで最後と思っても、まだ5本、10本と取り残されている大根の始末に、始末の出来ない分は無理をしないで土に返そうと思いながら、ふと切り干し大根を作ってみようという思いが浮かんできました。

 『野菜だけ? 目からウロコの野菜まるごと料理術』大谷ゆみこ著(メタ・プレーン2004年発行)の切り干し大根の料理法「切干しダイコンのハリハリ漬け キュウリおろしあえ」(切干大根とわかめをきゅうりをおろして梅酢で和えたもの)が孫たちは大好きでよく作ってきていたからでした。「野菜だけ」といっても、どの料理もちょっと洋風でおしゃれでおいしい料理が満載なので、長らく料理の参考にさせていただいてきている本なのです。

 ずっと昔、京都の幼稚園の園長をされていた友人から、切干ダイコンだっていい無農薬で作られたきちんとしたものを選ばなければいけないと忠告されていたことも思いだされてきました。折角の無農薬のおいしい大根です。この機会に作ってみようと切干大根作りに挑戦してみました。3月の良い天気が続く中たくさんの大根がいろいろと太さを変えての甘くておいしい切干大根に変身してくれました。

 そして太めに切った切干大根はその甘みを失わないように、もどす水の量に注意しながら十分にもどして、自然食品店で出会った柚子ポン酢に漬けておくだけのいたってシンプルな切干大根のメニューも加わりました。このポン酢は、これからの季節、福井ではよく出回る、もずく(海藻)の味付けに我が家では欠かすことの出来ない調味料ともなっているのです。たかが切干大根といっても、こうして自分で作って料理してみると、これまでの既成品としての切干大根を使うことが当たり前だった生活の中では見えてこない奥の深さを垣間見る思いがするのです。

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