【論説】財務省や防衛省・自衛隊などの公文書に関する不祥事が相次ぐ中、今度は加計(かけ)学園疑惑が再燃した。

 学園が愛媛県今治市に獣医学部を新設した計画が国家戦略特区制度の認定を受けたのは昨年1月。その2年近く前の2015年4月に、当時安倍晋三首相の秘書官だった柳瀬唯夫現経済産業審議官が「首相案件」と述べたと記す文書が存在していたと一部で報じられた。

 愛媛県の中村時広知事は「備忘録」とする一方、県や今治市の職員が官邸で柳瀬氏と面会したことを事実上認めた。備忘録とはいえ「間違いなく担当者が作成した」とも述べている。文書は特区制度の審議前の段階で「加計学園ありき」の筋書きがあったことをうかがわせる。

 学園の加計孝太郎理事長は、首相の数十年来の「腹心の友」で、度々ゴルフや会食を共にする間柄。学園と愛媛県、今治市は2007年から14年まで計15回、構造改革特区で新設を申請してきたが、全て却下されてきた。文書の存在で、首相が関与していたのか、それとも官僚が首相に忖度(そんたく)してのことなのかが再び問われる。

 報道によれば、文書は15年4月2日に県や市、学園の関係者らが官邸を訪れ、面会した柳瀬氏の発言を県職員が記録したとされる。柳瀬氏の「主な発言」の書き出しに問題の「本件は首相案件」とある。

 さらには「国家戦略特区でいくか、構造改革特区でいくかはテクニカルな問題であり、要望が実現するのであればどちらでもいいと思う」「現在、国家戦略特区の方が勢いがある」と記載している。新設計画は戦略特区諮問会議の認定、文部科学省の大学設置審の答申を受け今春開学した。とりわけ特区審議では、文書が示すような流れで進められたとの疑いを持たざるを得ない。

 文書は保管義務がなく、県庁内では確認できなかったという。柳瀬氏はこの日の面会に関し、昨年7月の参院予算委員会で「会った記憶はない」などと答弁。報道を受けたコメントでも改めて否定した。

 加計学園問題では、特区担当の内閣府が「総理のご意向」などと文科省に早期対応を迫った文書が見つかり、前川喜平前文科次官が首相側近からの働きかけなどで「行政がゆがめられた」と証言。安倍首相が学園の特区事業者認定をするまで、学部の新設計画を知らなかったと答弁したことにも疑問符がついたままだ。そうした疑問に対して政府は何ら根拠も示さず、「記憶にない」「記録がない」とことごとく否定し、解明にも背を向けてきた。

 15年4月の官邸訪問もその一つだった。文書は大学誘致を進めたい一心の愛媛県職員の手によるもの。柳瀬氏の発言を聞き逃すまいと書き残したはずだ。一連の経緯を再検証する必要がある。ただ、国会や国民を欺いてきた政府の調査では無理がある。全容解明に向け国会に特別委員会などを設けるべきだ。
 

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