発達障害のある人を主な対象にした「さくらハウス」。ひきこもり経験のある人も利用している=福井県福井市内

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 中学3年になり、学校の相談室に不定期で通い始めた。自宅から離れた昼間の定時制高校に進み、卒業後に職業訓練施設に1年間通った後、物流関係の会社に就職した。初めての職場は希望していた部署ではなく、倉庫内の作業だった。「面白くはなかったが、嫌というほどじゃなかった」

 1年目の冬、配置換えになった新しい職場で同僚とうまくいかなかった。そんなつもりはないのに、「やる気がない」「仕事が遅い」ときつく言われた。それが嫌で約1カ月休職し、病院で適応障害と診断された。元の職場に戻ったが、別の病気で手術が必要になり、また休職。「職場に迷惑をかけられない」と感じ、退職した。2年目の夏前だった。両親は「1年間は頑張った」と認めてくれた。怒られるのを覚悟していたが、意外だった。

 退職後、中学時代のような生活に戻った。「違うのは、ベッドで横にならなくなっただけ」。ゲームや調べ物でずっとパソコンに向かって過ごした。アルバイトを始めたが、数日しか続かなかった。

 家族と食卓を囲み、時には1人だったり、友だちとだったりで近府県にドライブに出掛ける。自分がひきこもりかと問われると、「そう言われれば、そうかもしれない」。

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 もし、会社を辞めていなかったら、配置換えがなかったら、と考える時がある。大学に行ったり、就職したりしている友だちと自分を比べて、落ち込むときもある。

 男性は今、発達障害のある人を主な対象にした就労継続支援B型事業所「さくらハウス」(福井市)に通っている。「将来は元のように働きたいが、ずっと続けられるか心配。まずは(事業所で)毎日仕事ができるようになりたい」

 さくらハウスの施設長で臨床心理士の田中和代さんは「激しいいじめや虐待がなくても、少しの意志の弱さから、不登校やひきこもりになる場合がある。食事の支度や掃除など、まずは身の回りのことを自分でやるよう促すのも自立に向けたトレーニングになる」と強調した。

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