解体作業が始まった松文産業旧女子寮=4月5日、福井県勝山市旭町1丁目

 繊維業界が好況に沸いた1960年代に全国から集団就職した少女たちの寄宿舎で、国の近代化産業遺産にも認定されている福井県勝山市旭町1丁目の「松文産業旧女子寮」の解体工事が始まった。「織り子さん」が暮らし、市民にとっても思い出深い建物。「勝山の原風景」が消えることを惜しむ声も上がっている。

 女子寮は1933(昭和8)年に建設。木造2階建ての宿舎が南北に3棟と、東側に旧講堂が立っている。60年には鉄筋コンクリート宿舎1棟も建てられた。71年に集団就職の受け入れを終えて以降、製品検査などの作業場として利用された時期もあったが、長年使われていなかった。

 市によると木造建築物の維持、管理には限界があるとして、松文産業から2011年2月に取り壊しの申し出があった。その後、同社と保存できないか協議したものの方策が見つからず事実上、解体が決まっていた。

 今月から重機での本格的な解体が始まり、5月末ごろにはすべての作業を終える予定。同社では「改修保存ができればよかったが難しかった。さみしい思いもあるが、やむを得なかった」と話している。07年に近代化産業遺産に認定されているが「建物保存は所有者に任され、解体許可も必要ない」(経済産業省)という。

 市民の間からは取り壊しを惜しむ声が上がっている。60年に宮崎県から集団就職し7年間、女子寮に入っていた齋藤ケサミさん(73)=同市=は「建物を維持するのは大変で(解体は)仕方がない」と理解を示しながら「当時400人ほどの女性が寮にいて、青春の思い出がいっぱい詰まった場所。複雑な気持ちでさみしい」と吐露した。

 1月に建物調査に入った市教委市史編さん室職員の山田雄造さん(69)は「勝山で繊維産業が盛んだった頃をしのばせる建物。貴重な建物がなくなっていくのは惜しい」と残念がっていた。

関連記事
あわせて読みたい