【論説】存在しないとされてきた陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報が見つかった問題で、日報が1年以上前に確認されながら防衛相らに報告されていなかった。昨年の南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報問題に続き隠蔽(いんぺい)体質があらわになった。情報が即座にトップに伝わらない事態は、文民統制の機能不全と言わざるを得ない。

 昨年3月に日報を確認していた陸自研究本部(現教育訓練研究本部)の担当者は「報告の必要があるとの認識を持っていなかった」と説明しているという。しかし、国会で「見つけることはできなかった」と答弁した当時の稲田朋美防衛相の指示で、確認の約2週間前まで探索が続けられており、不自然さは否めない。

 当時はPKO日報問題を巡り、国会で野党が激しく追及していた。宿営地を狙ったとみられる砲撃が十数回に上るなど、イラク派遣部隊の生々しい状況が記された日報を出せば、火に油を注ぐことは明らかで、これを避ける意図があったのではないか。どの立場の幹部までが知っていたのか、早急に示す必要がある。

 小野寺五典防衛相は参院外交防衛委員会で「私もふに落ちない点がある」と述べ、防衛省の政務官を中心とする調査チームで解明を急ぐとした。

 PKO日報問題を受け、当時の稲田朋美防衛相が指示した特別防衛監察では、「制服組」と「背広組」の確執から原案が修正されるなど疑惑が晴れたとは言い難い状況だった。稲田氏の関与についてもあいまいさが残った。高検の検事長経験者を起用した調査でさえそうなのに、身内ではやはり限界がある。第三者による調査をすべきだ。

 小野寺氏は「私の(再調査)指示で今回の事案が表に出てきた」と、文民統制が機能していないとの指摘を否定した。ただ、森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんが発覚した先月12日の幹部会で、情報公開の徹底などを指示した小野寺氏に対して、イラク日報に関する情報は全くなかったことも明らかにした。

 「重要な事案を認知したら直ちに一報があるべきだ」と強調したが、小野寺氏自身が省内を統率できていない証左ではないか。陸自や内局などが取捨選択した情報しか上がってこないのでは、トップが判断を間違える可能性は否定できない。有事に備える防衛省、自衛隊だけに、国の存亡にも関わる重大な問題と捉えるべきだ。

 安倍政権では、加計問題を巡る文部科学省の「総理のご意向」文書、厚生労働省の不適切データ処理、財務省の文書改ざんなど、「国民全体の奉仕者」であるべき官僚の不祥事が相次いでいる。官僚幹部の人事権を一手に握る政権への行きすぎた忖度(そんたく)が一線を超えさせたとの疑念が渦巻く。

 政権の統治能力が問われる事態だというのに、官僚だけに責任を押しつけるさまは異様に映る。「安倍1強」の保身が目に余る。政治家がけじめをつける時ではないか。
 

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