【論説】日本と中国が、約7年半ぶりの「ハイレベル経済対話」再開へと動きだした。4月中旬にも実施される対話で中国は、経済圏構想「一帯一路」への連携を強く求めてくるだろう。同構想はアジアのインフラ整備を推し進めるものだが、軍事的影響力を含めた中国の権益拡大、地元の過剰負担といった問題も指摘される。途上国支援で安全と秩序を重視する日本が、同構想とどのような距離感で臨むのか、難しい交渉になる。

 「一帯」は、中国から中央アジアなどを通り欧州へつながる帯状の地域。「一路」は中国沿岸から東南アジア、インド洋、アフリカなどを経ていく海上路を指す。鉄道や港湾など途上国のインフラ整備に中国が資金提供し、関係強化を狙うもので、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が金融面から構想を支えるとされる。

 ただ、中国に対する巨額の債務負担に耐えられなくなれば「インフラや資源を奪われる」(米政府筋)との懸念は根強い。昨年、中国はスリランカのハンバントータ港の権益を手に入れた。パキスタンのグワダル港でも、中国海軍が利用するとの見方がある。これらは重要港湾として知られ、中国が戦略的に動いていることは確実視される。今後もこうしたケースが起きてくる可能性がある。

 また、カンボジアのリゾート開発では、中国人ビジネスマンが殺到し、現地住民が立ち退きを迫られている実態が報じられた。開発が地元に豊かさをもたらしたかどうかは、日本として慎重な分析が求められる。

 政府は2017年版「開発協力白書」で、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」が主眼に置くのは、質の高いインフラ整備とともに、各国の課題に応じた法制度の普及だとしている。海上交通の安全や秩序を確立しつつ、例えば巡視船艇といった資機材の供与を図っていく。自由や法の支配といった価値観の共有を目指す考え方だ。

 日中の綱引きを象徴する外交シーンが1月にあった。スリランカ、モルディブを訪問した河野太郎外相は中国の名指しを避けつつ、「港は透明性、開放性、経済性が必要だ」と、暗に中国に傾斜しすぎないよう訴えた。

 とはいえ、全国人民代表大会を経て、習近平(しゅうきんぺい)国家主席の権力基盤は盤石。一帯一路に前向きな国や国際機関も、既に140を超えているという。一帯一路に慎重な態度を取ってきた日本だが、安倍晋三首相は昨年から、「大いに協力できる」といった発言を行うようになった。中国の外交力に押し込まれた印象だ。

 ただ、首相発言は協力の条件に国際社会との協調、事業の経済性などを挙げたものだった。中国にインフラの軍事利用を許さず、真に地域に恩恵をもたらす案件なら考えても良い、との意味がうかがえる。したたかな中国外交を向こうに回しながら、この“条件”をどう実現していくか。ハードルは高いが乗り越えなくてはならない。

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