【論説】「存在しない」とされてきた陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報が見つかり、「またか」と多くの国民があきれ返ったはずだ。昨年の南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報問題でも「ない」はずの日報が存在し、当時の稲田朋美防衛相が引責辞任、隠蔽(いんぺい)の調査結果を受け防衛省幹部が辞任に追い込まれたことは記憶に新しい。

 小野寺五典防衛相は「PKO日報問題の再発防止策の一環として丹念に捜していて明らかになった」と釈明したが、陸自が存在を確認してから小野寺氏に報告されるまで2カ月半以上もかかっているのは不自然だ。森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん問題などとタイミングを見計らった節はないのか。文民統制が果たして機能しているのか再び問われる事態だ。

 イラク派遣の日報は、PKO日報問題が国会論戦となっていた昨年2月に野党議員が資料として要求した。これに対して防衛省は「不存在」と回答。その後、別の野党議員らの質問に、稲田氏が「確認したが見つけることはできなかった」と答弁していた。

 PKO日報で表記された「戦闘」に関し、稲田氏が「武力衝突」と苦しい解釈を繰り広げていた時期に重なる。イラク日報にも従来の公表資料にはない生々しい現地情勢の記述がある可能性が高い。防衛省が野党の追及逃れを目的に、隠蔽したとの疑念は拭えない。

 防衛省はPKO問題を受け、昨年7月末から統合幕僚監部で日報を一元管理。全部隊に日報などの調査を指示する中で、今年1月12日以降、陸自研究本部と陸上幕僚監部衛生部が相次ぎ文書の存在を陸幕総務課に報告したという。しかし、陸幕から統幕への一報は2月末、小野寺氏への報告は3月末だった。

 陸自などは「分量が多く内容の確認作業に時間がかかった」としている。だが、PKO日報に加え、加計学園問題を巡る文部科学省の「総理のご意向」文書や、厚生労働省の裁量労働制に関する不適切データ処理、さらには財務省の改ざんと、省庁の公文書に関する不祥事が国民の不信を招く中、恣意(しい)的に遅らせた疑いはないのか。防衛省は5日の参院委員会などで明確に説明すべきだ。

 PKO部隊は昨年5月に南スーダンから撤収。安倍晋三首相は5年という「一定の区切り」との説明に終始したが、日報に記されたような不測の事態を避けるための判断だった側面は否めない。日報は今後、隊員の生命を危険にさらさないための貴重な教訓といえる。保存するのは当然だ。

 一連の公文書管理や情報公開を巡る問題は民主主義の根幹を揺るがす重大な国民への背任行為だ。政府は公文書管理のガイドラインを見直し、各省庁で4月から管理規則の運用が始まったが、手ぬるい対応では済まない状況にある。罰則規定を設けるなど、抜本的な改正をすべきだ。時の政権にとって不都合な事実が隠蔽されたり、削除されたりする事態は見逃せない。

関連記事
あわせて読みたい