【論説】森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、当時の理財局長として証人喚問を受けた佐川宣寿前国税局長官の証言に関し、共同通信社の緊急電話世論調査で72%が「納得できない」と回答した。誰が何のために改ざんしたのかなど、肝心の問いには証言を拒否。それでいて、安倍晋三首相や昭恵夫人、官邸、財務省幹部らの関与は明確に否定するなど、その姿勢は首相や政権を守ることに終始したと映ったようだ。

 首相や与党は、佐川氏の喚問で幕引きを図りたい意向だが、世論調査では「首相に責任があると思う」が65%、「昭恵氏の国会招致が必要だ」は60%にも上っている。内閣支持率は42%と前回から4ポイント近く増えたが、2回連続で下落したとの全国紙調査もある。国民の疑念を置き去りにしたままでは信頼回復はほど遠い。昭恵氏にはぜひ自らの口から事実を語ってもらいたい。その上で首相が繰り返し強調するように、特別委員会や第三者委員会を立ち上げて「徹底解明」すべきではないか。

 財務省が8億円余りの値引きをした背景には、昭恵氏への忖度(そんたく)があったのではないかとの疑いは何ら解消されていない。首相は改ざん前の文書に触れ「妻が具体的にこうしてくれと頼んだことは全くなかった」とし「忖度がなかったことは明確ではないか」と述べているが、そこまで言い切る根拠は薄い。

 改ざん前文書によると、近畿財務局は、籠池泰典前学園理事長が求めた貸し付け契約をいったんは拒否。しかし、昭恵氏と一緒に収まった写真を見せられた上に、「夫人から『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と聞かされ、約1カ月後に契約に協力する旨を伝えた。さらに、音声データでは校舎敷地内でごみが見つかり、購入を申し出た前理事長が、昭恵氏が棟上げ式に出席する予定を口にしながら、大幅な値引きを迫っていたことも明らかになっている。

 首相の言う通り、前理事長の一方的な話だった可能性はある。一方で昭恵氏付きの職員が前理事長と財務省の仲介をしていたことが判明している。勾留中の前理事長は野党議員との接見で、小学校建設の進捗(しんちょく)状況などを昭恵氏や職員に随時報告していたと述べている。財務省は昭恵氏の存在を意識していたとみるべきだろう。

 「安倍1強」の下で首相夫人の影響力は大きく、国会議員以上かもしれない。それゆえ決裁文書から削除されたのではないか。首相は「これを聞いてもらいたいと私に言っていただければ、私が答える」と答弁したが、予算案の成立で首相が出席する予算委員会は限られよう。昭恵氏に聞きたいことは山ほどある。野党からは、記者会見を開いてはどうかとの提案もあったという。どういう場かはともかく、昭恵氏は公に、自らの言葉で説明する必要がある。それが国民の理解を得る最善の策のはずだ。
 

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