【越山若水】その言葉を知ったのは随分と前のことだった。「問題な日本語」など新語、俗語に詳しい明鏡国語辞典(大修館書店)の発表文で見つけた▼全国の中高校生から辞典に載せたい言葉を募集する「もっと明鏡大賞」という恒例の企画。いつも若者の感性に驚かされる一方で、世代間ギャップを痛感させられるイベントである▼2009年の最優秀作品の一つが「為生(ためい)き」だった。意味は「自分以外の他人のために生きること」で、例文として「ゴミを拾って為生(ためい)きしよう」と記されていた▼新しい年度が始まったきのう、県内の多くの企業や官公庁で入社式や入庁式が行われた。式場内にはおのずと緊張感が漂い、新入社員たちは期待と不安、さらに決意を胸に記念の第一歩を踏み出した▼学生から社会人へ、その一歩はまさにまっさら。これから色とりどりの出来事が待っているだろう。ただ自分中心で済んだ今までと違い、常に相手の存在を意識させられる▼社会人に必要な「為生き」の精神を意外にも若者から教わった。誰かのため、何かのため、もっと広く地域社会や世界のために働くという考えは立派▼世界で一番貧しい大統領と呼ばれたウルグアイのホセ・ムヒカ氏もこう話した。「他人のために何かできたら、自分も幸せになれる」。つらいと愚痴る「ため息」より、人に尽くす「為生き」を目標にしてほしい。

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