【越山若水】豊漁だといわれる通り、スーパーで体表に七つほどの星マークを浮かべたマイワシをよく見かける。さばく面倒が先に立つものの、その刺し身の美味に心が揺れる▼魚好きには近年の豊漁は意外な現象である。1990年代からさっぱりとれなくなって、もう気安く食べられないかもしれない、と半ばあきらめていたからだ▼とり過ぎたんじゃないかと、身勝手に腹を立てたりしたが戻ってきてくれた。だから筆者などは、海とマイワシに感謝しながら頂くのが、しかるべき態度である▼それにしても、なぜ豊漁か。専門的には「魚種交代」らしい。マイワシやマサバなどは競合関係にあり、数十年周期でどれかが圧倒的に増える。いまはマイワシの番なのである▼では、なぜ魚種交代が起きるのかといえば、長期的に変動する海水温が原因、との説が有力だ。低温期にはマイワシが優勢になるのだそうで、その精妙な仕組みは人知を超える▼人間はどうなのだろう、と突拍子もないことを考えた。先日の本紙によると、日本の総人口は2045年には2千万人減って1億645万人になると推計されている▼ずっと自然増を続けてきたのに減る。初めて直面する事態だから慌ててしまうが、拙速に人口を増やせばいいというものでもないだろう。人間による乱獲や魚種交代にも、しぶとく生き残るマイワシに学びたい。
 

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