【論説】安倍晋三首相は、外交と経済が得意だという。いろいろな見方はあるが、本人が自信を持っている節はうかがえる。その真価が試されそうなのが、18日にも行われる日米首脳会談だ。最重要テーマは言うまでもなく、5月までに行われる米朝会談に日本の立場を反映させること。加えて、米国の輸入制限措置を受け経済交渉が差し迫った課題に急浮上した。成否から中長期的な影響を受ける可能性のある重要会談といえる。

 今回の日米会談は、3月の電話首脳会談で安倍首相が約束を取り付けた。トランプ氏が韓国の仲立ちに応じる形で米朝会談を行う意向を明らかにした直後のことだ。北朝鮮の非核化については、検証可能で不可逆的なこと、何より拉致問題が置き去りにされないことなど、日本として譲れない線がある。首相としては、米朝会談を控えたトランプ氏に“振り付け”をしておく狙いだったろう。

 しかし、3月下旬に米政権が発動した鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置を受けて、会談の性格は複雑化した。輸入制限は中国を標的にしたものだが、日本も今のところ適用対象に入っている。貿易摩擦の回避が喫緊のテーマだ。

 輸入制限は「米国安全保障上の脅威に対する措置」が建前。ただ、中間選挙を控えるトランプ氏の頭を占めているのは「国防産業を守る」こととみられる。河野太郎外相らは発動前、「同盟関係にある日本からの輸入は脅威にならない」と適用除外を働き掛けていたものの、トランプ氏にはピント外れとしか聞こえなかったのではないか。

 米国は、適用除外国を4月末までに確定するとしている。国としての除外のほか、関係企業による製品別の除外申請手続きも進められている。18日の日米会談は、輸入制限の行方を占うヤマ場になる。

 気になるのは、米韓が3月下旬、自由貿易協定(FTA)再交渉に合意したことだ。この際、米国への鉄鋼輸出量を抑えることを条件に、輸入制限対象から韓国を除外することでも合意している。輸入制限を振りかざす米国の交渉が利を上げた形で、米朝会談を控える韓国側としては、強く出られなかったことも想像に難くない。

 米国は、日本に対してもFTA交渉を求めている。これを拒否している日本は、FTAの問題と輸入制限問題が取引材料ではないと主張している。米朝会談を控える今、強力なカードを多数所持しているのは残念ながら米国の方だといわざるを得ない。

 米国との経済交渉に向けた考え方について首相は3月末、参院予算委で、自由貿易の重要性を強調し「保護主義は必ずしも、発動した国の利益にならない」と述べた。こうした正論も大事だが、「米国第一」が基本的思考のトランプ氏を動かす工夫がほしいところだ。

 支持率低下にあえぐ首相が日米会談で成果を上げられないようだと、総裁選に向けた足場をまた一つ失いかねない。
 

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