【論説】北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が電撃的に訪中し、習近平(しゅうきんぺい)国家主席との中朝首脳会談を行った。4月27日に開催が決まった南北首脳会談、5月までに実現する米朝首脳会談に備えた動きだ。狙いは長期的な体制保証にあり、非核化をカードに戦略的に外交を進めだしたとみるべきだろう。

 金委員長はとりわけ、直感的な決断をしがちなトランプ米大統領に対し、どう向き合うのか苦慮しているとの見方がある。対話に前向きだったティラーソン国務長官を解任、北朝鮮への先制攻撃容認論を唱えるボルトン元国連大使を大統領補佐官に起用したことなども危惧しているとされる。強硬姿勢が想定される米国との首脳会談が決裂し、軍事的緊張が再燃する事態に備え、中国を「安全弁」にしようとの思惑だ。

 決裂回避に向け過去にならって日米韓に中ロを加えた多国間協議の枠組みに踏み込む可能性もある。中朝会談で金委員長が言及した「段階的で歩調を合わせた措置を講じれば朝鮮半島非核化の問題は解決できる」がそれを示唆している。

 中国は、北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の議長国として関わってきた。影響力を回復したいとの思いはやまやまだろう。1強体制を確立した今、習主席には国内的にも、国境を共にする朝鮮半島で存在感を示す必要に迫られている。貿易戦争寸前にある米国へのカードにもなる。

 中国を「後ろ盾」として、6カ国協議で「段階的」に制裁緩和や経済支援を取り付ける。これは北朝鮮が過去にも繰り返してきた手法であり、その間に核・ミサイル開発を進め、昨年の「国家核戦力の完成」宣言につながった。

 先代の金正日(キムジョンイル)総書記も、血盟的な同盟関係にある中国を最初の外遊国とした。2000年5月に訪中。その後、6月に南北首脳会談、さらにはロシアのプーチン大統領とも会談を行った。当時のクリントン米大統領との会談はならなかったが、招請直前の段階まで話は進んでいた。02年9月には小泉純一郎首相との初の日朝首脳会談に至った。

 金委員長がこの流れに沿うかどうかは見通せない。安倍政権にとって一縷(いちる)の望みを託したいところだが、圧力一辺倒、米国追従に軸足を置き続けた結果、蚊帳の外にあることは否めない。4月の日米首脳会談で、拉致問題解決や中・短距離ミサイル放棄を促すよう求めるしかないのが現状だ。

 問題は、金委員長の「非核化」の言葉を、北朝鮮メディアが一切伝えていないように、真意なのか見極めがつかないということだ。数十年にわたって国民生活を犠牲にしてまで構築してきた核・ミサイル開発をそうやすやすとは手放さないとの見方が大勢だ

 日米韓は中国などと連携して北朝鮮に「非核化に向けた具体的な行動」を要求し続けなければならない。それには対北包囲網による圧力維持は欠かせない。北朝鮮を対話の流れから逃すことなく、粘り強く核・ミサイル放棄を迫るべきだ。

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