【越山若水】日本は大小さまざまな思いつきにあふれている、と英国人記者のコリン・ジョイスさんが書いている。銭湯、本の新書判、コンビニのおにぎりに代表される包装…▼そして、これら以上に素晴らしさが際立つのは花見だ、と言っている。「長い冬の後で、実に身も心もほぐれるよう」と(「ニッポン社会入門」NHK出版)▼そんな年中行事の幕開けである。福井市でもきのう、桜の開花が発表された。昨年より7日、平年に比べても5日早いのは、豪雪に苦しんだ県民への慰労だろうか▼心が騒ぎ、坂井市の県総合グリーンセンターへ車を走らせた。開花が発表されたのはソメイヨシノだが、桜は日本に600種以上もある。そのいくつかの咲き具合を見たかった▼早咲きで知られる「河津桜」が、紅色も濃い無数の花を付けていた。もう見ごろと言ってもいい。通りすがりの女性がスマートフォンをかざし、いとおしむように撮影していた▼そばに植わっているオカメや大寒(おおかん)桜はつぼみが目立つ。センター内のソメイヨシノもまだまだで、それより少し開花が早いと説明板にある陽光は開花の気配がなかった▼こうして眺めてみると、桜の品種名にはゆかしいものが多い。淡い緑の花弁が珍しい御衣黄(ぎょいこう)、半八重咲きの思(おもい)川(がわ)、八重に咲く天の川、普賢象(ふげんぞう)。しかも、それぞれに美しい。桜の世界も1強であってほしくない。

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