【越山若水】英国の2ポンド硬貨の側面にこんな格言が刻まれている。「巨人の肩の上に立つ」。万有引力を発見した科学者、ニュートンが知人宛ての手紙で用いたとされる▼「私がかなたを見渡せたのは、ひとえに巨人の肩の上に立っていたからです」。先人の積み重ねのおかげで、自身の発見が生まれたと謙虚な思いを書き留めた▼ニュートンが初出でなく、欧米人が好んで使う言い回しらしい。今ある文明や科学の進歩は古代の数々の業績があればこそ。賢人たちの知恵に敬意を表したという▼では、あの人も「巨人の肩の上に」立ったのだろうか。中国を電撃訪問した北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)委員長である。習近平(しゅうきんぺい)国家主席と会談し「朝鮮半島の非核化実現に尽力する」と明言したと伝えられる▼それは2人の偉大な先人「金日成(キムイルソン)主席と金正日(キムジョンイル)総書記の遺訓に従う」ものと説明。近く開催される韓国と米国の首脳会談も「和解と協力の関係に転換する決心」だという▼平和的解決は大歓迎だ。しかし過去の裏切り行為を思えば疑心暗鬼にもなる。経済制裁の苦境を逃れるため「中国の肩の上に」乗ったのかと邪推する▼ましてかつて「血盟」と呼ばれた中朝関係である。中国にすれば、再び北朝鮮カードを手に入れ、米韓主導のアジア外交にくさびを打ち込みたいところ。ニュースの裏側に虚々実々、各国の思惑が入り乱れている。

関連記事
あわせて読みたい