【論説】なぜ文書改ざんに及んだのかの核心部分は語らないまま、安倍晋三首相の昭恵夫人や官邸などの関与を否定するばかり。予想されたこととはいえ、これでは何ら疑念は晴れない。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、当時の理財局長だった佐川宣寿氏が証人喚問に臨んだ。改ざんの経緯などを問われると、「刑事訴追の恐れ」を理由に証言を拒否。一方で改ざんへの官邸などからの指示をことごとく否定した。

 誰が、何のために改ざんを指示したのか。麻生太郎副総裁兼財務相や太田充理財局長が国会で、佐川氏に関し「最終責任者」「関与の度合いが大きい」などと答弁してきた。背任や虚偽公文書作成などの容疑で捜査している大阪地検からの事情聴取が想定される中、佐川氏から真相に触れる証言は期待できないとの指摘が的中した形だ。

 ただ、改ざんへの首相官邸や他部局などからの指示は明確に否定。「私や妻が関係していたなら、首相も国会議員も辞める」とした首相答弁も、自らの国会答弁には「影響しなかった」とした。首相や財務省の一連の主張に足並みをそろえたとの疑いは拭えない。

 昨年11月の会計検査院の結果報告では売却額がずさんに算定されたことが明らかになっている。財務省近畿財務局の職員と、学園の籠池泰典前理事長の価格交渉と受け取れるやりとりを記録した音声データの存在も相次いで判明している。

 佐川氏はそれにもかかわらず、「適正に処理した」と証言。価格交渉を巡る1年前の答弁は「今も正しかったと考えている」と述べたのには違和感が否めない。財務省が示した改ざん前の文書には、借地契約前に「貸付料の概算額を伝える」とあり、複数の政治家の問い合わせが記録されていた。借地契約をいったん断った近畿財務局が、学園側の示した昭恵氏の名前や発言を受け、「協力」を伝えた経緯も記されていた。

 佐川氏が直接関わってもいない国有地の貸し付けや売却を巡って、昭恵氏らの関与を再び否定したのも疑問だ。「勉強」と称し職員から話を聞くなどする中で、上がってこなかったことを理由にしたが、「全員には確認していない」とも述べた。根拠があまりに希薄ではないか。

 交渉記録を「廃棄した」などとした答弁が「丁寧さを欠いていた」と反省。改ざん理由を暗ににおわせたかのような発言にも受け取れる。しかし、これだけのことで理財局の一部の職員が、国民や民主主義に対する重大な背信行為に走ったとは考えられない。

 野党は「改ざんの経緯に関する答弁を全て避けた。疑惑は逆に広がった」などと非難。昭恵氏や売却時の理財局長、昭恵氏付きの職員らの国会招致を引き続き要求し、安倍政権の追及を強める。「徹底解明」を表明している首相もその言葉通り、特別委員会や第三者機関の設置など、あらゆる手を尽くすべきだ。

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