【論説】福井県越前市に建設する北陸新幹線南越駅(仮称)の周辺整備に、政府が観光立国の柱として進める統合型リゾート施設(IR)を誘致する案が浮上した。

 唐突感はあるが、地域のポテンシャルを生かす大胆な発想であり夢が広がる。ただ全国で進む誘致計画への出遅れ感は否めず、カジノを含む地域開発に地元理解が進むかも不透明だ。ハードルは高い。

 福井経済同友会が23日、奈良俊幸越前市長に提言した。背景には「2核型」と呼ばれるJR駅の構成がある。南越駅は県内で唯一既存の武生駅と離れて新設される。周辺に約100ヘクタールの農地が広がり、開発の可能性を秘める一方、周辺人口から「国内で最も乗降客数の少ない新幹線駅となる危険性」(同友会)もある。

 そこで提言が鍵を握るとするのがインバウンド(訪日外国人客)だ。政府は2030年の目標数値にインバウンド6千万人、観光消費額15兆円を掲げ、達成する切り札としてIRの整備を打ち出している。

 南越駅は国道8号、北陸自動車道のインターチェンジに近く、広域交通の結節点にある。新幹線駅前のIR整備計画は全国でも例がない。折衷案として提言した伝統工芸、観光経営に関する専門職大学の設立と合わせれば、人材育成や産業・雇用の創出などへの期待が膨らむとしている。

 具体的効果として▽県内はじめ、白川郷、京都、琵琶湖など広域ツアーの拠点となる▽海外観光客に魅力がある越前和紙や越前焼など伝統工芸の活性化▽関西への北陸新幹線の早期延伸促進―などを挙げた。

 ただし課題は多い。IR実施法案は整備箇所数や入場料金を巡り与党協議が難航、国会提出が遅れている。根底にギャンブル依存症への懸念があり、制度設計がまとまらない状況だ。マネーロンダリング(資金洗浄)や地域の治安悪化など、負のイメージが拭えていないのは地元理解という点で問題だろう。

 開業区域に選ばれるのも容易ではない。誘致活動は北海道、東京、大阪、長崎など全国で進む。同友会も出遅れを認めて2次公認を目指すとしている。

 政府案はカジノとは別に、相当規模の容量の国際会議場や展示場、宿泊施設を必須要件としており、地方からは「大都市に比べ不利。過大投資を招く恐れがある」との不満も漏れる。

 巨大な集客力は波及効果が期待されるものの、全てが整備された区域内で完結する恐れがある。まちなか観光や広域観光、地域経済との連携が成り立つか、見極めないといけない。

 提言には5年後に迫った敦賀開業へ全県的な機運を高めたいとの思いがこもる。国への申請や事業者選定は県など自治体の役目だが、経済界や市民を含む「オール福井、オール北陸」(奈良市長)で臨まないと絵に描いた餅に終わる。
 

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