【越山若水】相対性理論などを発表し「20世紀最大の物理学者」と呼ばれたアインシュタイン。第2次大戦前にナチス政権に追われ米国へ亡命。戦後は平和運動に力を尽くした▼その過程で偏狭な「ナショナリズム」、すなわち自分の所属する民族や国家の統一や繁栄を志向するイデオロギー「民族主義」「国家主義」の潮流を懸念した▼アインシュタインは世界に台頭するナショナリズムを「人類のはしか」と形容し、子どもがかかりやすいウイルス感染症・麻疹(ましん)に例えた。高熱と発疹が特徴である▼ところが21世紀の今、ナショナリズムの風が吹き荒れている。「米国ファースト」を掲げるトランプ大統領を筆頭に欧州やイスラム諸国は「自国第一主義」。中国やロシアも「強大国路線」を目指す▼国民の不平不満を取り払うため、はたまた政府批判の矛先をかわすため、各国首脳は他国を容赦なく攻撃し同胞意識をかき立てる。真意は単純、大衆迎合の人気取りである▼生物学的に現生人類のヒトは白人も黒人も含め単一種である。近縁の北京原人やネアンデルタール人が絶滅し、ホモサピエンスだけ生き残ったからだ▼つまりナショナリズムの拡散は、同一種でいがみ合う愚かな構図といえる。はしかは比較的軽い病気と思われがちだが、時に重篤化し死に至ることもある。「人類のはしか」によく効くワクチンはないだろうか。

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